山形のパン工房 厳選素材で地球と体に優しく

すべての人の元気のために

年々深刻化する自然災害や、収束のめどが立たない新型コロナウイルスによるパンデミック。これらの現象を人類の行為を省みるための気付きの機会と捉え、「地球と体に優しい暮らし」を大切にしよう─と行動するパン工房が山形村にある。
ドイツパン工房「ビオランド」。シュラーク・ティルさん(44)が8年前から営む。厳選したオーガニック素材で、手間を惜しまず「真に体が喜ぶ」パン作りに取り組む。
パンは全国に発送。売り上げの一部は自然保護団体に寄付している。地域で使われる農薬の危険性にも声を上げるなど、さまざまな形で「自然の摂理」に基づく生活を発信。ネイティブアメリカンの教え「7世代先の子どもも健康に生きられるように」がモットーだ。

小麦にこだわり5種類使い分け

パンの焼ける香ばしい匂いが漂う「ビオランド」。硬めのパンをかみ締めると、生命力あふれる麦の滋味が、体中に溶け込んでいくよう。このパン工房のキーワードは、ヴィーガン(動物由来のものを使わない)、オーガニック、サスティナブル(持続可能)だ。
ドイツの伝統的製法により麦と水のみで発酵させた酵母「サワー種」をもとに、人工的なものを加えないなど「自然の摂理」に沿った原材料だけを使い、時間をかけて丁寧にパンを仕上げる。
特に小麦には徹底してこだわり、有機や自然栽培の5種類の品種を使い分ける。品種改良を重ねて作られた現代の小麦がアレルギーなどの原因になる─と考え、グルテンが少なく、栄養価も高い古代小麦の「スペルト小麦」や「一粒小麦」も取り入れる。
シュラーク・ティルさんと妻のさやかさん(43)は、13歳から1歳の育ちざかりの子ども4人との6人家族。家族との時間も大事にしたいと、当初から店舗は持たず、顧客への直接発送と卸、イベント等で販売してきた。
発送用の梱包(こんぽう)材はビニール袋のほか、一般的にはパンの敷紙に使うことが多いグラシン紙も選べる。質とコストの折り合いから輸入品が多い原材料だが、フードマイレージ(食料の輸送距離)にも配慮。原材料の生産から手掛けたいと、昨年から村内3カ所の畑を借り、小麦4種を生産している。労力は増えたが、少しずつ「変革」を始めている。

農業や環境問題 強い思いで活動

ティルさんはドイツ出身、さやかさんは千葉県出身。東京にあるマクロビオティックの料理教室で出会った。
ドイツ人ながら、玄米とみそ汁を食べる両親の下で育ち、日本の伝統的な食事や精神性を尊ぶティルさん。一方、さやかさんも10代後半で体調を崩した経験から「食べた物が明日の心と体をつくる」と実感する。食をきっかけに、農業や地球環境の問題についても突き詰めて考えるようになった。
自然豊かな信州に越してきてからも、旧来型の農薬や化学肥料に頼った農業に疑問を感じてきた。中でも、子どもの発達への危険性が指摘され、ドイツでは住宅街での使用が禁止されている除草剤の使用を何とかしたいとの思いは強い。昨年には役場に何度も掛け合い、公共施設での使用停止や村の広報誌での注意喚起が実現した。
「自分たちが声を上げることで、どうしていいか分からなかったという人の勇気になれば」とさやかさん。ティルさんは「すべての人間が元気でいてほしい。そのためにも、体や地球に優しい商品を作り続け、メッセージを届けていきたい」と話している。
パンは山形村の「ファーマーズガーデンやまがた」、安曇野市の「安曇野スイス村ハイジの里」で購入可。問い合わせはメール(natural-living@hotmail.co.jp)で。