[創商見聞] No.67 草間 淳哉 (ウェブエイト)

 「創商見聞 クロスロード」の第67弾は、ウェブ制作やマーケティングブランドのコンサルタントサポートをしている、㈱ウェブエイト社長の草間淳哉さん。創業期から現状、また新たな構想に取り組む話を聞いた。

新しい街を創りたい

【くさま・じゅんや】44歳。松本市神田生まれ。中京大学社会学部卒。ソフトウエア会社、医療機器販売会社などを経て、独立。2008年4月ウェブエイト創業。代表取締役社長。

ウェブエイト

松本市井川城1-6-29
サーキットデザインビル3F
☎0263・25・9308

ーアフィリエイト(※1)から
 大学卒業後、ソフトウエア会社に就職し、システムエンジニアやマーケティングプロジェクトなどを担当しました。
 4年ほどでしたが、頑張り過ぎたのかもしれません。体調を崩し、別の仕事もしたくなったため、知人を通じて医療機器の販売会社に転職しました。
 別の業界だったので興味深いことも多かったのですが、やはり関心はウェブ業界にあり、再び副業で取り組み始めました。
 インターネットで商品を紹介し、手数料を得るアフィリエイトに関心を持ったのは2004年ころです。
 今でこそ物販系のアフィリエイトは一般化していますが、当時は認識されておらず、どこに市場や需要があるのかすら分からない。その情報にたどり着くのにも時間がかかりました。
 しがみつくように研究を重ね、フィットネス系ビデオのアフィリエイト広告で、初めての手数料1242円が自分の口座に振り込まれた時はうれしかったです。
翌月に1万円、次月には3万円、1年後には月間で100万円以上の収益を得られるようになり、自信を持てました。
 アフィリエイトは、実績の測定がとても明確です。どのアドレスからどのページ経由で購入したか、データでたどれるので、ただ広告を掲載するのではなく、どういう商品をどう紹介するかというマーケティング手法が問われます。
 1年かけて身に付け、発展させたアフィリエイトの技量は、自然とマーケティングプランやコンサルタントスキルを学びとることにもつながったと思います。
 フリーランスのウェブコンサルタントとして独立し、ホームページなどを制作。2008年にはウェブエイトとして法人化しました。
 創業時、名前には数字や色を入れると覚えられやすいと聞いたことがありました。自分の名前の、淳哉から『じゅんぱち』と周りから呼ばれることが多く、その「はち」からの連想で「ウェブエイト」です。
ー経営者ではなかった創業期
 松本市神田にある自宅を簡易的な事務所に改造し、従業員6、7人でホームページの制作などを始めました。
ナガブロ(※2)や松コン(※3)の運営の仕事は楽しそうに見えたのか、採用には困りませんでした。一方で、辞めていく社員も多かったです。
 今から思えば、大義名分を掲げての創業ではなく、フリーランスからなんとなく流れで法人化した会社でしたから、従業員を引き付ける企業理念やビジョンを、経営者として示せていなかったと思います。
 フリーで発揮する個人の力量と組織を運営する経営者としての力量の違いに苦しみました。経営者になり切れず、「器」がついていかなかった。
 「自分がどうしたいか―、会社をどうしたいか―」。ずっと考えていました。
 現在は、経営理念を「ミッション=0から1を。2歩先へ」「ビジョン=挑戦が祝福される世界へ」と設定し、社員たちと共有しています。
―セミナー講師
 法人化して間もないころから、松本商工会議所のセミナーで講師を務めていました。同商議所では、当時「ホームページビルダーを使うセミナー」など簡易的な講座しかなかったので、本格的なウェブマーケティング講座などを求められ、対応しました。
 フェイスブックやLINE(ライン)などSNSに関する講座も随時、柔軟に開催しました。今でも、年間3~4本、同商議所主催のセミナーで講師を務めています。
―街を創りたい
 会社をどうするべきか悩みはじめたころに発想したのですが、将来は、人・観光客が集まり、一流ブランドが集う、そんな地域ブランディングのリードオフマンになって動く姿を思い描いています。地域のリーダーたちのリーダーになりたいです。
 街のイメージは「市」ではなく、多様で魅力的な店舗が軒を連ねるストリートです。松本にも縄手や中町などいくつもの商店街があります。既存の商店街ではなく、自分たちで新ブランドとなるニューストリートを立ち上げていきたいです。
 地域ブランドでは「食」が代名詞となるくらい重要で、観光資源にもなります。コロナ渦前に「食」に関する新しい事業計画を、松本市内で進めていました。今は滞っていますが、コロナが収束に向かえば、再度進めていきたいと考えています。
 街を創るには自分以外のビジネスリーダーも増やしたい。そのために、人材育成に直結するセミナーなどを積極的に開催しています。現在、年間130本ほどセミナーで講師を務めています。コロナ禍で人に会えなくなりましたが、オンライン化によって対象が全国に広がり、参加者は増えています。
―次世代経営者育成塾へ
 最近はマーケティングコンサルタントの業務が多いのですが、今後もコンサルティングとウェブクリエイティブの両面でやっていきたいです。
 コロナ禍になって決断力が鈍っていると感じました。昨年は回復したのですが、一昨年は過去最大の赤字も経験しました。
セミナーでは登壇する身なのですが、まだまだ足りないこともある。今勉強しないと将来行き詰まると感じ、昨年から松本商工会議所の「次世代経営者育成塾」に通い始めました。講師の瀬畑一茂さんの話を聞き、勉強の日々です。次世代のリーダーになれるよう、将来を切り開いていきたいです。

※1 アフィリエイト
 インターネット広告。ウェブ上の媒体と広告主と結び付けるマーケティング手法。
※2 ナガブロ
 長野県内を中心とした口コミ情報ブログサイト。2万4000人登録、1日40万アクセス。
※3 松コン
 松本市中心市街地活性化プロジェクトによる合コンイベント。2014~19年開催。

松本商工会議所主催のセミナーで