
「居心地いい」身近な場所に
退職後などに家にこもりがちな男性が、地域に出やすくなるきっかけに─。松本市の各地区にある福祉ひろばで、対象を男性に限定した事業が好評だ。健康増進や介護予防だけでなく、身近な地域で仲間をつくる狙いもある。男だけの気軽な集まりの現場で声を聞いた。
東部地区福祉ひろばで14日に開かれた「男のふれあい健康教室(ふれ健)」。5人の参加者は、正月疲れなどを解消するストレッチを教わった。「あー、気持ちいい」という声の傍ら、「アイタタ、(体が)硬えなぁ」とぼやきも聞こえ、和やかな雰囲気だ。保健師による健康相談なども含め約1時間。おのおのすっきりとした表情を見せた。
運動不足が気になっていた新村昌弘さん(76、城東1)は友人に誘われ初参加。「男性だけなので初めてでも来やすい。次回も参加したい」と満足そう。
同ひろばは性別不問の「ふれ健」を毎月開く一方、男性特化の環境と内容で参加を促そうと2007年から別日に「男のふれ健」を始めた。
講師の健康運動指導士・西山知花さん(46)は、息を止めて無理しがちだったり、女性と比べて体が硬かったりする男性の特性を踏まえ、指導しているという。
同福祉ひろば事業推進協議会の土屋晃一会長(76、城東2)は「男性が興味を持ちそうな事業を考え利用を増やしたい」と話す。
松原地区福祉ひろばは、男性対象の料理教室、ストレッチの他に、仲間づくりの事業「おとこの会」を毎月開く。おしゃべり好きな仲間が集い、木のおもちゃやソーセージ作り、マレットゴルフなど、参加者の意見で活動を計画する。
「趣味もなく、定年退職後は不安だった」と語る荒井良司さん(69、松原)は、町会役員を引き受けた縁でひろばに足を運び、おとこの会に誘われた。「居心地がいい場所が身近にあることは大切」と実感している。
おとこの会は、開始から10年がたち、来年度から「ひろばサークル」として独立予定。同ひろばは次なる仲間づくり事業を展開する方針だ。
コーディネーターの山田薫さんは「ふれ健や公民館サークルへの参加など、よい連鎖も見られる。ひろばに足を運ぶとっかかりになれば」と話す。
本郷地区福祉ひろばでは「メンズ・エクササイズ」を毎月実施。19年度に単発で開いて好評で、翌年度から通年事業に。利用者のうち2割ほどしかいない男性の重い腰を上げるきっかけをつくった。
青嶋昭夫さん(86、横田4)は「多くのイベントは女性が多数で『わにちゃう』。気兼ねなく参加できありがたい場です」と歓迎する。
岡田地区福祉ひろばは、男性対象の健康教室を発端に15年度から「男組」と称した事業を毎月開催。参加者が活動を計画し、グラウンドゴルフやオーバルボール、しめ縄作り、コロナ禍前は旅行や会食などで交流している。敷地内の樹木の害虫駆除、高所の窓拭きなど男手の必要な場面でも活躍し、ひろば運営を手助けする存在でもある。
コーディネーターの北嶌真奈美さんは「男性だけだと無邪気になれる。得意な人が講師になるなど、参加者内で自然と役割分担ができている」と話す。