【記者兼農家のUターンto農】#40 農閑期の仕事

繁忙期のため心身整えて

冬に農家は何をしているのか─。雪に覆われた田畑を見て、そう思う人もいるだろう。
まさに雪上で働いている人がいる。朝日村の専業農家、上條直也さん(42)はその1人。地元のあさひプライムスキー場でリフト運行に携わっている。
葉物野菜、主にレタスを作っているが、10月いっぱいですることがなくなる。しばらくして降り出す雪が、山に仕事場を作ってくれる。12月終わり、スキー場がオープンすると通いだす。
2月に入る頃にはハウスで種まきや苗の管理が始まるが、忙しくなるのは3月になってから。農閑期にちょうどはまるのが、スキー場勤務だった。農家仲間のつてで始め、8シーズンほどになる。
「うちにいたらボーッと過ごしちゃう」と上條さん。「ここに来れば体を動かせる。それが一番かな」。経済的にも助かるのだろうが、1年を通して働き続けられることの意義を強調した。
それは分かる気がする。うちで言えば、父は外に働きに出ることはないが、よくスコップやつるはしを手に田畑であぜを直したり、家の水回りを修繕したりしている。
子どもの頃の私は、その必要性がピンと来なかった。やるに越したことはないんだろうけど、今やらなきゃいけないの?寒い中で手伝わされる不満もあって、あえてすることを作っているようにも思えた。
推測は当たらずとも遠からずだったと、上條さんの話を聞いて思った。たまにうちでボーッとしている父は、くつろいで見えるときもあるが、手持ち無沙汰でうっ屈しているようにも見える。
趣味で時間を充実させる人もいるだろう。母はそれにたけているが、父はうまくない。外で体を動かしていないと心も不調をきたしそうに見える。
農家は繁閑の差が大きい。それぞれの方法でバランスを取り、体や心を整えておくことは、農閑期の大事な仕事なのかもしれない。