【中村小太郎・駆け出し百姓の自然農奮闘記】#22 寒中で仕込みじっくり熟成「手前みそ」

「如月」。衣を更に着る。寒さをしのぐ重ね着から、2月をこう呼びます。わが家では、おみその寒中仕込みシーズン到来です。
山国の信濃は、戦国の世に断塩で苦しんだことから、みそという塩の貯蔵法が進んだことは想像に難くありませんでした。でも信州の中でも、わが塩尻のお隣、諏訪周辺のみそがなぜ有名になったのかは疑問でした。
1923(大正12)年の関東大震災の際のことです。救援物資として諏訪地方のみそがたくさん送られました。養蚕業が盛んだった岡谷まで鉄道が通じていたことが大きかったと、お付き合いのある喜多屋醸造店(岡谷市)にお聞きしました。
そのみそが評判を呼びます。当時の関東では、人工的に加温する速醸法が多かったといいます。対して諏訪地方では、雑菌が少なく貯蔵に適した冷涼な気候の中で、昔ながらのゆっくりと熟成させる天然醸造でした。風味が違ったのです。
私たちの作り方も昔どおり。脱穀した大豆を良い豆とだめな豆に手でより分けます。まん丸でかわいい大豆は、水につけるとぷっくり。力を秘めたような形になります。ここで焦らず一昼夜。煮て、丸めてみそ玉を作ります。こうじは小太郎米で醸します。
空気を出すようにみそ玉をたたきつけ、かめに仕込みます。ラップをして、上にワサビをすって置きます。これはカビ対策。暗くて涼しい場所に寝かせてわが家の常在菌に委ねます。これぞ手前みそ。