【像えとせとら】ヘルスパ塩尻 淵(塩尻市大門一番町)

スポーツコミュニティー施設の正面入り口前にあるブロンズ像。球体の上で、女性がぎりぎりのバランスを取っている。ひねられた上半身や上下に伸びる腕など、どの角度からも見応えがあり、表情も豊かだ。逆光の中のシルエットが、また美しい。
作者は女性像を中心に創作する彫刻家、遠藤幹彦さん(72、埼玉県)。この作品は1984(昭和59)年の第3回高村光太郎大賞展で、美ケ原高原美術館賞を受賞した。彫刻家として売り出し中のころに創作した、代表作の一つだ。
「上昇と下降、飛翔と崩壊のはざまの、緊張の一瞬を表現した」と遠藤さん。作品名も「崖っぷちに立っているような“危うさ”を感じさせるものにした」と言う。スポーツ施設の前で見ると、どんなことがあってもバランスを保つ、強靱(きょうじん)な肉体と精神を表しているようにも感じる。ある利用者は「体幹の大切さを表現したのでは」。この場所ならではの解釈だ。
「おそらく、施設がオープンしたころからある」と事務長の西澤富雄さん。施設を運営する公益財団法人「体力つくり指導協会」(東京)によると、ヘルスパ塩尻の開設は1989(平成元)年8月。およそ30年ほど利用者の姿を見守り、見守られてきた。
遠藤さんは「作品がずっと地域の暮らしの中にあることがとてもうれしい。作家冥利(みょうり)に尽きる」と喜んでいる。