突然の息子の脳炎 経緯や思いを記録

病気でも日常の楽しさがある

シンプルな線と温かな色調のイラストが目を引く6冊の小冊子。突然の子どもの病気の経緯や回復の記録、親のストレスマネジメント法などが、絵日記風につづられている。
作ったのは松本市の姫野亜実さん(33)。息子の丈(じょう)ちゃん(3)が1歳10カ月の時に急性脳炎を発症。それを機に、戸惑いや葛藤を整理しながら、日常をタブレットで描いていくことが、ストレスのコントロールにもなってきたという。
1冊目の「息子が脳炎になった話」には、小児ワクチン接種が原因で、25万人に1人という確率のウイルス性脳炎を発症した経緯や回復の過程を描いた。病気と向き合いながら親子が成長する様子はインスタグラムでも発信され、さまざまな気づきを与えてくれる。

様子描くことで客観的な目線に

「信じられないというショックと今後への不安、目が覚めたら普通に元気に起き上がるんじゃないかという錯覚に陥った」
姫野亜実さんの息子の丈ちゃんが突然嘔吐(おうと)したのは2020年6月。高熱や激しいけいれんに見舞われ、安曇野市豊科の県立こども病院のICU(集中治療室)へ。脳が腫れ、かなりのダメージを負っており、医師からは「後遺症が残らない確率は30%」と告げられた。
後に、髄液からウイルスが見つかり、ウイルス性脳炎との診断を受けた。原因は、5月に接種していたおたふくかぜのワクチン。日本では初めての症例だった。
息子の突然の病気の原因が予防接種と知り、大きな衝撃を受けた姫野さん。とにかく泣き、信頼できる人に話し、カウンセリングを受けるなどした。ストレスがたまる入院の付き添い生活の中で、「何かにアウトプットしないと自分が壊れてしまう。客観的に自分たちを見たい」と、入院生活の様子をタブレットに記録し始めた。
絵が得意という訳ではなかったが、試行錯誤しながら丈ちゃんの食べた物や体の動き、リハビリの様子を細かくスケッチ。特に気に入っているのは、こども病院のリハビリ室の鮮やかな床マットに転がる丈ちゃんや、心身ともに回復していく様子を描いた月ごとの描写だ。後に、自身が掛けられてうれしかった言葉や、ストレスマネジメント法もそれぞれ1冊にまとめた。
丈ちゃんは医師も驚くほど順調に機能回復し、同年9月に退院。今も右半身にまひは重く残るが、歩行器なしで歩けるようになり、公園の滑り台も大好きだ。姫野さんは「子どもと離れる時間も大事」と、週に1度の英語講師の仕事を継続。丈ちゃんは今春から保育園に通う予定だ。

障害者と健常者 補い合う社会に

家族の絵日記は、今もインスタグラムに投稿されている。「大変な病気ではあるけれど、ずっと悲しく不幸なわけじゃないし、日常の中に楽しさやうれしさもあるということ、そして病気のことも多くの人に知ってもらいたい」と姫野さん。
理想は、障害者と健常者が普通のクラスで過ごすアメリカのようなスタイル。人見知りせず明るい性格の丈ちゃんを公園やカフェにも日常的に連れていくことで、障害がある子の存在が認知され、皆が補い合って暮らせる社会をも期待する。
新型コロナウイルスのワクチン接種が5~11歳の子どもにも可能となり、それに対する保護者の意見も二分している。姫野さんは丈ちゃんのケースは極めてまれとしつつ、「薬やワクチンは有効ではあるけれど、どんなものにも副作用やリスクがある。何も知らずに受けるのでなく、情報収集して納得した上で選択することが大事では」と話す。
冊子はカフェ「アルティメット・コーヒー・ブリュワーズ」(松本市平田東1)や姫野さんのインスタグラム(「joe_isspecial」で検索)で閲覧できるほか、メルカリでも購入可能。