塩尻東公民館のウェブ講座人気

全国コンクールで銀賞  人と人つなぐ役割果たして

コロナ下に誕生し、人気を集めているオンライン講座がある。塩尻東公民館(塩尻市塩尻町)が2020年夏から動画投稿サイトYouTubeで配信しているウェブ講座だ。
本年度は投稿動画数が260本を超え、視聴回数も11万回を突破した。1月には第4回全国公民館インターネット活用コンクールで銀賞を受賞。県内では歴代最高の評価を得た。
講座の柱は昨年4月にスタートした「ふるさと歴史講座」。同公民館長の平林袈裟雄さん(75)と主事の林徹さん(59)がほぼ毎週、地元のあちこちを取材。動画を撮影し、配信する。
視聴者が街歩きを始めたり、廃道の保存活動を模索したりする動きも出始めた。住民の行動や交流促進にもつながっているウェブ講座とは─。

館長と主事の二人で取材し

2月18日午後、公民館長の平林袈裟雄さんと主事の林徹さんはいつものように軽トラックに乗り、塩尻東公民館を出発した。行き先は、地元の阿禮(あれい)神社例大祭で曳行(えいこう)される舞台の一つ、上町(かんまち)町内会の舞台がしまわれている蔵。
待ち受けた上町舞台保存委員会の中村強会長(73)ら3人に平林館長が撮影の流れを説明すると、林さんがカメラを回し始めた。
中村会長らが舞台の製作年や舞台上の人形などについて説明。平林さんは「(人形の修復をした)太田鶴斎(かくさい)についてもう少し説明を付け加えてください」「(欄干の彫刻を彫った)立木種清(たつきたねきよ)を説明する時、舞台に残る種清の花押の話をし、カメラでも花押を撮ってください」と補足の指示を出すなど、ディレクター役を務めた。

ウェブ講座は、2020年4月の緊急事態宣言で、公民館の全講座が中止になったのを受けて、企画担当の林さんが前館長の三澤正照さんらと相談して始めた。
同年7月から始まった初年度は、書道やヨガなど幅広いテーマで26本を配信。この時の視聴回数はまだ、毎回40~70回ほどだった。

「歴史講座」開始 視聴回数10倍に

本年度の「ふるさと歴史講座」は、郷土史に詳しい平林さんが館長になったのを機に開始。地元の街道、寺社仏閣、学校、碑、峠、旧跡などを次々と取り上げると、視聴回数は10倍に膨れ上がり、1000回を超える回もあった。
半日かけて取材した素材を林さんがすぐに編集し、2日後には投稿する。1投稿1テーマ、10分以内にまとめるため、1度に10本以上投稿することも。昨年6月は60本も配信した。
特に高い関心を集めているのは、時間の経過とともに朽ちていくものや、工事などで姿を消すものを取り上げた回という。「地域の“いま”を記録する役目もある」と林さんは言う。

2人とも理系。数学の教師だった平林さんは、定年退職後に勤めた市教育委員会時代に市の文化財保護審議委員を務める太田秀保さんと6年間、市内を歩き回って歴史に詳しくなった。
林さんは物理や化学が好きで、歴史は大の苦手だったが、「歴史を知ると、景色が違って見えてくる。この1年で地域を見る目が変わったし、地元の人とも話が弾む」と目を輝かせる。
「歴史や散策が好きな人だけでなく、朗読会などさまざまな人が関心を寄せ、日頃の活動に取り入れようとしている」。平林さんはそう話し、人と人とをつなぐ役割を果たしていることに満足そうな表情を見せた。