松本深志神社と筑摩神社の狛犬が対面

数百年の時を超えての再会か─。
松本市の深志神社(深志3)と筑摩神社(筑摩2)にそれぞれ1体保管されている木製の狛犬(こまいぬ)が2日、筑摩社で「対面」した。
深志社の像は宝物として保管され、筑摩社では長く宝蔵庫に眠っていた。「筑摩の狛犬が深志の狛犬と似ている」と筑摩社の氏子が指摘したのをきっかけに、両社宮司らが2体を検分。深志社の像は口を開いている阿形(あぎょう)、筑摩社の像は口を閉じた吽形(うんぎょう)で、大きさや寄せ木の造りなどもほぼ同じだった。
「もともと一対だったのでは?」。検分の参加者の間では、そんな見方が広がった。対だとすれば、なぜ別々になったのか、「謎」が残る。関係者は「両社の深いつながりが感じられる」と、狛犬に歴史的なロマンをかき立てられている。

阿吽で一対の可能性秘める

筑摩神社社務所の大広間。2日、座卓に木製の狛犬(こまいぬ)が2体、対面する形で置かれた。保管する深志、筑摩両神社の関係者が初めて行った「顔合わせ」だ。
狛犬を囲んだのは深志社宮司の牟禮(むれ)仁さん(72)、筑摩社宮司の林邦匤さん(75)、狛犬研究家の高松伸幸さん(53、安曇野市穂高有明)ら。牟禮さんが検分までの経過を説明し、狛犬の大きさを測定した。高さは2体とも44・5センチ、長さが39センチ、39・5センチでほとんど同じ。寄せ木した胴体の継ぎ方や、胸板の彫り方もほぼ同じだった。
狛犬は神社や寺院で一対で向き合っているか、参拝者と正対して置かれるのが一般的。阿(あ)・吽(うん)の形でそろっていることが多い。
「(2体が)阿吽で一対のものだった可能性がある。片方(深志社の像)が首を振っているのが、ちょっと引っ掛かる」。観察した高松さんは、そんな感想を述べた。その後調べたところ、阿吽で顔の向きが異なる例はあるという。造られた年代は中世~近世と推測している。

深志社図録で類似性を指摘

深志社の像は、松本藩主だった小笠原家の奉納と伝えられ、宝物として本殿に保管されている。筑摩社の像は6年前、当時の氏子総代だった平林千佳男さん(69、松本市筑摩2)らが絵馬殿などを整理した際、宝蔵庫から見つけた。
2体の類似性を指摘したのは熊谷三明さん(68、同)。深志社の図録を見る機会があり、気付いた。これを林さんに伝えると、今年に入り牟禮さんに連絡。牟禮さんは1月14日、筑摩で行われた篝(かがり)火(び)神事の際に狛犬を見せてもらった上で、高松さんにも連絡を取り、関係者で見比べることにした。

2体が対だと断定はできない。対だとしても、別れ別れになった理由は何だったのか、解明は難しそうだ。検分に立ち会った人たちは「小笠原氏が分けたのかもしれない」(熊谷さん)など、狛犬の来し方や両社の関係性に想像を膨らませている。
牟禮さんは「元は一対のものとして作られた可能性が高いと、みんなが感じたのではないか。(2体の)貴重な対面の機会が得られ、感銘が深い」と話した。今後、さらに深く調査する予定はないという。