氷瀑美術館 王滝

王滝村の御嶽山3合目半にあり、古くから御嶽行者の精進潔斎の場として知られる「清滝」と「新滝」。今冬は厳しい冷え込みで両滝とも全体が凍り、大自然の魔法がかかったような圧巻の氷(ひょう)瀑(ばく)と化した。芸術性の高さに目が奪われ、見とれてしまう「氷瀑美術館」。壮大かつ繊細な厳寒の造形美にカメラで迫った。

氷点下の世界 圧巻の造形美

2月18日午前7時、気温は氷点下15度。清滝の前に立つ。見上げると落差30メートルの滝口まで凍り付き、まぶしく輝く氷瀑の上部が青空に溶け込んでいる。昇る白竜を連想させる荘厳な光景に、思わず息をのみ手を合わせた。
この冬は、度重なる南岸低気圧の影響で木曽地方も降雪が多く、雪をまとい静寂が漂う清滝は、近年見なかった神々しい風情を際立たせていた。
午前9時半。清滝とは趣が違う新滝に到着。こちらも落差32メートルの滝口まで凍り付く壮観な氷瀑で、撮影意欲が刺激される。別名“裏見滝”とも言われ、洞窟内から滝の裏側が見られる。特に厳冬期の光景が神秘的で圧巻だ。
薄暗い洞窟の奥には氷に覆われた霊神碑が何体も並び、霊気が漂う。神聖な場所なので撮影前に新滝不動明王にお参りした。
辺りは直径1メートルを超える氷柱やアイスカーテンが共演。夢世界さながらの雰囲気だ。天井の岩盤から伸びるおびただしい数のつらら、割れ目から染み出て落ちた水がタケノコ状に凍った氷筍(ひょうじゅん)も。エメラルドグリーンの氷瀑の真後ろに立つと、想像を絶する驚きの世界と遭遇…。何百体もの仏像を思わせる、まろやかで安堵感のある優しい領域が広がる。
厳寒がつくりだした感動と癒やしの美の世界。新滝で出合った数々の氷の芸術作品は、リアルなものから抽象的なものまで多彩だった。
滑りやすい洞窟内は8本爪のアイゼンとヘルメットを着用した。氷の色調の表現にこだわり、太陽の移動とともに変幻する氷瀑の光彩を追った撮影は約5時間に及んだ。
(丸山祥司)