【像えとせとら】道祖神(生坂村上生坂)

「乳探り」仲むつまじい姿

生坂村にどきっとする道祖神があるとの情報を耳にした。訪ねてみると、立派なほこらの中に男女が仲良く並び、男神が女神の懐に左手を入れて乳房をまさぐり、女神がその手を着物の上からそっと押さえている。どんな願いが込められているのだろうか。じっと観察するにはちょっと恥ずかしい姿だ。
ほこらを作った地元の平林工務店の社長、平林正明さん(80)によると、作られた年月は不明だが、子ども時代から近くで祭りが開かれたり、相撲大会や三九郎を行ったりしていたという。「仲むつまじい姿から『縁結びの神様』として伝わっています」
松本市内田の重要文化財馬場家住宅館長で、道祖神について30年以上研究を続ける窪田雅之さんに尋ねると、正式名ではないが「乳探り道祖神」とし、珍しい形ではないという。男女の神が並ぶ双体道祖神では、肩を抱く「抱肩像」、キスをする「接吻(せっぷん)像」などもあり、夫婦円満、恋愛成就、子孫繁栄などの意味があるらしい。
県内の道祖神は江戸時代中期以降に建てられたとされ、始めは疫病や悪霊から守る「村の守り神」の意味合いが強かったが、時代や地域ごとに作られる理由も変わっていった。「日々の暮らしが良くなるように祈った村人の心意を具現化しており、人々の生活の証しとして残り続けている」と窪田さん。
だんだんと暖かくなる春に、地域の道祖神を訪ね歩いてみようか。