「不登校の親の取扱説明書」オンラインで講演

経験者語る親への気持ち

学校に行か(け)ない、なじめないといった子どもたちの本音を聞きたい─。そんな思いから安曇野市内の不登校の子どもを持つ保護者でつくる「ひらく~あずみの不登校を考える親の会~」(代表・片桐政勝さん、山本愛さん)は2月末、不登校経験者による講演会「不登校の親の取扱説明書」をオンラインで開きました。参加者は北海道から沖縄まで約80人。話の一部を紹介します。

人と比較しないで

語り手は、生きづらさを抱える子どもたちを支援する団体「hanpo」メンバーの2人。同名のフリーペーパーの編集長・草深将雄さん(32、長野市)と信州大教育学部4年の福住悠斗さん(24、同)です。共に不登校の経験があり、その体験や思いを対談形式で語りました。
2人とも嫌だったのは「人と比較されたこと」。小さい頃に比べられた体験は、ずっと引きずってしまい「大人になっても縛られて苦しい」と言い、福住さんは「親に『私の育て方が間違っているのではないか』と言われ、本当にショックだった」と振り返ります。
逆にうれしかったことは「適度な仕事を任せてくれること」。「自分はここにいていいんだ」と存在を認められた実感があったと言います。「親が自分の人生を楽しんでくれる」ことも挙げました。
「不登校の子は、自分がこの家を苦しめているという自覚があります。当たり前のことができない自分の苦しみと、親につらい思いをさせている苦しみの2つを持っています。でも、自分はそれを見せないようにゲームでカムフラージュしていました。親が子どもにかかりきりになる中で、家にいるのはとてもつらかった」と言います。

子育てに正解なし

「ピリピリしながら聞いた人も多いと思うし、実際そうであってほしい」と草深さん。「自分の体験や思いを聞きに来る人がいるということは、今も切羽詰まった状態の人がいるということ。明確な答えや助言を求めている人もいるかもしれないが、子育ては一通りではないし正解もない」と思います。「だから家庭の教育方針やちまたに流れている教育論、テレビでよく見る教育評論家の話やデータもストレートには受け取れません」
草深さんは、子どもと呼ばれているうちはまだ成長段階だとし、その時に子育てを間違えたと決めつけたり、答え合わせをしたりすることに疑問を呈します。
インパクトのあるタイトルは2人が考えました。狙いは、家庭の中で親子が互いを尊重しながら生きていくにはどうしたらいいかを考えてほしいためです。「決まった説明書はなく、僕らの話がそれぞれの『取扱説明書』を作るための材料になってくれれば」。

「ひらく」は毎月第4土曜日午後2~4時、安曇野市穂高有明の新屋公民館で定例会を開き、市外からも参加しています。問い合わせは片桐さんTEL080・4007・1216、山本さんTEL090・4758・5322