上高地で追う 光の春

小枝を赤く染めた暖色の装いのケショウヤナギが雪に覆われた寒色の穂高連峰と共演=3月12日午前9時35分

冬期閉鎖中の北アルプス上高地に、目覚めの時を告げる“光の春”のノックの音が聞こえ始めた。とはいえ、まだまだ厳しい自然環境の上高地で、この季節にしか見られない赤々ともえ立つケショウヤナギ、寒さに耐えながら懸命に命をつなぐニホンザルの姿をカメラで追った。

赤々ともえ立つケショウヤナギ

ケショウヤナギの学名は、サリックス・アルブチフォリア。日本では上高地の梓川河畔と北海道の日高・十勝地方に自生するだけだ。冬季、小枝や若木の冬芽が赤く染まり、独特の景観をつくる。
3月に計5回上高地入り。快晴の12日は早朝から、大正池に始まり、河童橋、明神、徳沢上流へと撮影に臨んだ。こだわったのはケショウヤナギが放つ赤の再現だ。上高地をステージ、白無垢(むく)の穂高連峰を背景に、赤い衣装をまとって踊るプリマドンナのようなケショウヤナギの姿を捉えることができた。

雪の中命つなぐスノーモンキー

2つ目のテーマのニホンザルは、厳冬期には氷点下20度以下にもなる雪の中でも命をつなぐ。豪雪地域にも生息するため、「スノーモンキー」とも呼ばれる。
以前、信州大学農学部教授の泉山茂之さんが上高地のニホンザルのふんの調査をしたところ、約4割はハルニレやエゾヤナギなどの広葉樹の樹皮で、シナノザサの葉が3割。そのほか水生昆虫の幼虫も食べていた。
昨年12月、驚きのニュースが世界を駆け巡った。上高地のニホンザルが冬場にイワナ類と見られる魚類を餌としていることが、ふんのDNA解析で判明したと信大などの研究チームが発表。魚を口にくわえて歩く姿や食べている写真もあった。
群れには、大正池と河童橋、明神で遭遇。大正池付近では、樹皮を食べたハルニレの小枝が雪上に散在していた。河童橋周辺には、エゾヤナギの樹皮がはがされ、木質部が白く出て丸裸に近い木があるなど異様な光景も目に映った。上高地には10種類ほどのヤナギがあるが、ケショウヤナギの樹皮は食べられていなかった。
寒さに耐え、雪の中で好物の草や木が芽吹く本格的な春をじっと待つニホンザル。命の鼓動がカメラのファインダーを通し伝わってきた。
(丸山祥司)
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