開発した光触媒善光寺回向柱に 信大工学部錦織教授と共同研究

アシスト&ソリューション 技術顧問 古畑聡志さん 塩尻市

御利益を求め、たくさんの人たちが回向(えこう)柱に触れていく。御開帳が始まった善光寺(長野市)での光景に、人一倍の誇りと緊張感を抱く人がいる。塩尻市広丘高出の古畑聡志さん(78)。新型コロナウイルスの感染を防ぐため、柱に塗られた光触媒剤の開発を担った。
光触媒は、光のエネルギーでウイルスや細菌を分解する。古畑さんは、効率よく働く薬剤を信州大工学部の錦(にしき)織(おり)広昌教授と共同で研究した。5年前に売り出した製品が、コロナ下での御開帳の安全策を探る善光寺の目に留まった。
「思いがけないことです」と古畑さん。元はビルメンテナンス会社の経営者で、そのまた前は車販売の営業マン。奇縁に導かれ、善光寺と結ばれた。

信州の企業として貢献したい

古畑聡志さんの肩書は「アシスト&ソリューション」(松本市野溝西2)技術顧問。同社は、古畑さんが興したビルメンテナンス会社だ。総合管理を担う建物には、まつもと市民芸術館(同市深志3)やレザンホール(塩尻市大門七番町)がある。建物を守る事業にいそしんできた人が、どうして光触媒の開発に関わっているのか。
古畑さんは松本市和田出身。地元高校を卒業し、車の営業マンとして社会に出た。成績は会社で随一。「10年で2000台売った」。月収は70万~80万円にもなったという。だが、「こんな人生、長くは続かない」と思っていた。折しも1973年にオイルショックが起こった。
そんな時、雑誌に載ったビル清掃会社の経営者の写真に目がくぎ付けになった。三つぞろえのスーツを着込み、外車を乗りこなしていた。「かっこいい」。自力で事業をしている姿にも引かれた。
車の営業先に清掃会社があり、仕事を教わった。「イチかバチか」。76年、自分の会社を作った。
「お客さんから相談があれば、勉強して応える」。そうやって、事業を広げた。20年余り前、管理するマンションの水道から赤さびが出た。元来、人と違うことをするのが好き。「差別化しないと、会社も成長しない」。自前で水処理技術を持とうと、信州大の産学連携機関、地域共同研究センターの門をたたいた。50代で化学の世界に飛び込んだ。

やりがい感じ研究に励んで

「掃除と清掃は違う」が持論だ。汚れをきれいにするのが掃除で、汚れないようにするのが清掃という。防止にやりがいを感じた。延長に抗菌、抗ウイルスに効果がある光触媒があった。
信州大で光触媒を研究していたのが錦織広昌教授だ。暗くても効果を上げる薬剤を共同で開発し、2017年に商品化した。
コロナ禍でその「セラコート・ワン」が注目された。電車や音楽ホールなどに使われるように。錦織教授の紹介で善光寺から回向柱の打診が来た。
「地元信州の企業として貢献したい」。木材用の下塗り剤を新たに開発。先月30日、回向柱に塗りつけた。「効果は民間機関で実証されている。多くの皆さんに御利益があれば」
会社の経営は数年前に後継者に譲り、今はもっぱら研究に励む。「もっと速く、効率よくウイルスを分解する触媒を作りたい。勉強が追いつかないね」