【眺めてみれば】#1 餌差町から望む残雪の乗鞍岳(松本市)

山を意識し開かれた道の一つで

江戸時代、松本城下町の東の玄関口で、武家住宅が並んでいた餌(え)差町(さしまち)(松本市大手5)。閻魔(えんま)大王を祭る「十王堂」の前から南西に真っすぐ延びる通りの先に、残雪に輝く乗鞍岳(3026メートル)が見える。直線距離で約40キロ離れた山の頂上が、図ったようにその通りの真上に位置している。偶然か?
松本城下町の景観調査をライフワークにしている医師の溝上哲朗さん(59、桐)は、自身の著書「松本景観ルネサンス」の中で、城下町では設計段階で山に向かって意図的に通りをつくることがあり、これを「山当て」と呼んでいると紹介。
餌差町の通りもその一つで、「確かな意思を持って都市のあちこちに珠玉の空間デザインを配し、育んできた」としている。
松本を訪れた人への先人が残した「おもてなし」にも思えるこの景観。近くにまだあるという。探してみては。