スーツ姿に魅了 元競泳選手がオーダー店

「スーツを着た人の人生を豊かにする。そのくらいの気持ちを込めて仕立てています」
こう語るのは先月、松本市中央1に「オーダースーツSapeur(サプール)」を開いた帯川大輔さん(24、同市和田)だ。
2歳から水泳を始めて約20年、「競泳漬け」の人生を送ってきた。大学4年時には「東京五輪出場」を視野に入れるくらい実力があり、卒業後も「水泳に関わる仕事」に就くと思っていた。
ところが、就職活動用のスーツを買うために訪れた紳士服店で、店員のスーツ姿に一目ぼれし、人生が変わった。「水泳にかけてきたのと同じくらいの情熱を、今後スーツにかける」と帯川さん。
サラリーマンの「戦闘服」に魅せられた若者の挑戦が始まった。

「体形」に合った微調整が可能に

帯川大輔さんが開いた「オーダースーツSapeur」は、JR松本駅近くの路面店。生地の見本などが置かれたシンプルな店内で、帯川さんが見せてくれたのは、スーツを作る際の土台になる既製の型紙だ。
その型紙には、ミリ単位の手書きの補正が、何カ所も加えられている。「この補正は、胸囲や着丈などの寸法とは全くの別物」と帯川さん。「いくら寸法が合っていても着心地までは良くならない。補正はお客さんの体の特徴を感覚で数値化したもので、着心地を良くするために必要です」と強調する。
オーダースーツには、一から作る「フルオーダー」と、仕立ての工程を簡略化した「セミオーダー」がある。セミオーダーはさらに「イージーオーダー」と「パターンオーダー」に分けられる。帯川さんが行っているのはイージーオーダーで、パターンより体形に合った微調整が可能。「その人にとって『一番のスーツ』を提供したい」と力を込める。価格は5万9000円~。

水泳人生変えた衝撃の格好良さ

ぜんそくの持病があった帯川さんは、姉の影響もあり、2歳から安曇野市の穂高スイミングクラブ(現サンクラブ安曇野)で水泳を開始。めきめき実力をつけ、松商学園高校2、3年時にバタフライで全国高校総体に出場。東海大でも競技を続け、インカレ(全日本学生選手権)や日本選手権にも出場した。
特に、翌年に東京五輪が開かれる予定だった4年時のインカレでは、200メートル自由形で自己記録を更新。タイム的にもリレーメンバーとして五輪出場を狙えた。だが本人は「インカレで満足し、すがすがしく終われると思った」。頭の中には既に「水泳の次」があった。
インカレの少し前、就職活動用のスーツを買うため紳士服店を訪れた。そこで出会った店員のスーツ姿の格好良さに衝
撃を受けた。
「ほとんどジャージーしか着なかった自分が、『びしっ』と決めた男のスタイルに目覚めた」と帯川さん。「次」は「スーツ」だった。
紳士服製造と販売チェーン店展開をする企業に就職、スーツの勉強をした。その中で、自分のように上半身が発達した体形だと既製品のスーツは合わないと実感した。会社の仕事が物足りなくなり、1年半で退社した。
自力で得たスーツの知識と技術で昨年9月、「出張オーダースーツ」事業で独立。今年3月、実家のある松本市に店舗を構えた。
これまで友人や知人のために帯川さんが仕立てたスーツは約50着。帯川さんのスーツを着たら「(仕事で)契約が取れた」という友人もいた。「たかがスーツ、されどスーツ」と帯川さん。
「自分が仕立てたスーツで、着た人の人生を豊かにしたい」。若くして第二の人生にスーツを選んだ男の気概だ。
帯川さんTEL070・8552・8036