螺旋文様が誘う魅惑の縄文世界―宇賀神さん土器写真展

写真に対し自分なりの解釈を

縄文土器に描かれた螺旋(らせん)文様は、神秘的な魅力を放つ。朝日村針尾の写真家、宇賀神(うがじん)拓也さん(45)は26日から5月8日まで、松本市中央3のグレイン・ノートで写真展「JOMON―SPIRAL( ジョウモン スパイラル)」を開く。朝日村出土の縄文土器の写真約20点を展示する。
土器は、村歴史民俗資料館の収蔵品。入場者の邪魔にならない冬季休館中に大判カメラを持ち込み、3年かけて撮影した。
高い解像度で実物の何倍も大きくプリントされた螺旋文様からは、大昔に暮らした人の存在が目の前に迫ってくるようだ。螺旋文様は同村の縄文土器に多く見られ(宇賀神さん)「へその緒」という説もある。「縄文螺旋を体験できる空間にしたい」と会場の模型を作って準備を進める。

写真の魅力とは…農業通じ気付き

宇賀神拓也さんは東京都出身。早稲田大在学中に写真部に所属したが「写真を見て心が動いても、なぜなのかが分からなかった」という。卒業後は写真から離れ、エチオピアで日本の中古農機を扱う会社を設立。「何も考えず突っ走った」と振り返る。
事業は3年ほどで「頓挫した」が、現地でパーマカルチャー(完結自給型農業開発)を体験し、2011年に帰国。翌年、山林整備のボランティアで訪れた朝日村を気に入って移住し、米や野菜の栽培を始めた。2、3年過ぎた頃から作物を撮影するようになり、写真に関する書物も読み進め「なぜ写真が面白いのかが分かった」という。
現在は自宅近くに大全紙(508ミリ×610ミリ)サイズのカラープリントができる暗室完備のアトリエを構え、印画紙の裁断、プリント、額製作、額装といった写真に関する全工程を自身で行う。
18年から年3回ほど都内や村内などで作品を発表。3月には、農作業中のさまざまな年齢の男女を撮影して製本した「かがむ人」で、塩竃(しおがま)フォトフェスティバル2022写真賞のNikon賞を受賞した。

縄文追体験望む3年間の集大成

今展「JOMON―SPIRAL」について、宇賀神さんは「縄文の人が描いた螺旋文様を追体験したくて追い続けた3年間の集大成」という。
縄文の魅力とは何だろう。宇賀神さんは「観念で固まってしまった自分を気づかせてくれる」と語る。どういう意味か。
「土器に描かれた螺旋文様を見ていると、縄文の人々の無垢(むく)な表現への欲求が伝わってくる。すると、自分がいかに固定観念にとらわれているかが分かる」
エチオピアを再訪して撮影した作品も発表したが、「今は自分が暮らしている場所でやりたいこと、感じていることを深く掘り下げたい」と宇賀神さん。「写真は問いを立てるが答えを急がず、自由に思いを巡らせながら見てほしい」
午前10時~午後6時。会期中無休で宇賀神さんは全日在廊。