
いくつになっても夢中になれる何かがあることは、その人の生きがいにつながる。安曇野市で開催中の、日本最大級の総合美術展「日展」の巡回展に出品している70代の地元作家2人に、これまでの歩みや制作への思いを聞いた。
景色や思い表現試行錯誤面白く―陶芸家・高木さん
同市の陶芸家、高木初見さん(73)は立体作品に魅力を感じ、30代で作陶を始めた。独学で勉強しながら38歳で自宅に窯を設け、本格的に制作に打ち込んできた。日展には1994年から出品し、今回で14回目の入選。
「自分の思いを形にできる」と、食器や花器ではなく、自身が見た景色や思いを表現したオブジェが多い。焼き上がった作品は、窯から取り出すまでどんな仕上がりか分からず、その8割に「がっかりする」と笑う。なぜ陶芸を続けているのかを尋ねると、「たまたま陶芸に出合ったから」。
ものづくりが好きなわけでも、芸術家になろうと思ったわけでもなかったというが、後先を考えずにやってみた陶芸を、約40年続けてきた高木さん。「うまくいかないときも多いが、一つのことを面白がり、自分なりに試行錯誤しながらやってみることが大切」とし、「長年の経験で、失敗してもチャレンジする忍耐強さが付いた気がします」。
一度の人生燃焼人の美醜題材に―彫刻家・中山さん
松川村美術会の会長で彫刻家の中山邦彦さん(79)は、大学時代に制作を始め、その後は教師をしながら彫り続け、200点を超える作品を作ってきた。「『良い作品を作る』のではなく、『たった一度の人生をどう燃焼するか』を大切にしている」と言う。日展入選は4回目。
作品のテーマは、外見や内面の美しさもあれば醜さもあり、最も興味深いという「人間」。人体の丸みを強調したシリーズ作品や、社会への不満や抗議を表現した作品などがある。約60年作り続けても「表現して初めて見える感性の発見があり、面白い」と話す。
村美術会には絵画と彫刻、工芸、写真の4部門があり、平均年齢77歳の会員49人が、互いに教え合いながら制作している。異なる分野でも互いに刺激し合い、「うまい下手は関係なく、年を取っても学び続ける姿勢が素晴らしい。自分も作り続けていきたい」と中山さん。
会員の作品を展示する「第8回松川村美術展」は5月1~8日、村すずの音ホールで開く。入場無料。問い合わせは小澤さんTEL090・1695・0930
【第8回日展安曇野展】5月15日まで、安曇野市豊科近代美術館。日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門の入選作品など245点、県内作家の入選作品66点の計311点を展示。一般1000円、大学生600円。高校生以下無料。同館TEL0263・73・5638