「人生の思い出言葉で」長年の夢自宅に句碑

「空すべりきて睦(むつ)み合ふ春の鳶(とび)」「山の音封じ込めたる樹氷かな」―。上條忠昭さん(92、山形村中大池)が自宅に建てた石碑に刻まれた句だ。山形村の教育長時代、社会教育推進のため「山形句会」を発足。自身も会員になり、これまで一度も休むことなく投句を続ける。句碑は、長年の夢がかないようやく建立した。

投句休まず石探し10年余

句碑は縦80センチ、横120センチ、厚さ30センチほどの自然石だ。「空すべりきて―」は、自身の句集「零余子(むかご)飯」に収録、俳人の宮坂静生さんの著書「俳句必携1000句を楽しむ」にも収録された。「山の音 ― 」は、第29回塩尻合同俳句会で第1位大会賞を受賞した。
当初は「自分が辞めると、句会がつぶれるのではないか」という義務感から参加していたが、徐々に俳句の奥深さ、面白さのとりこになった。季節の変化に敏感になったり、漢字を覚えたり、言葉に凝縮された背景や心を感じたり。「句を作るというよりは、人生の思い出を言葉にして残している。心を静め、希望を持つこともできる」
力まず自然体に ― が上條さんの信条だ。「ひねってもいい句はできない。日常の暮らしの中で気づいたこと、感じたこと、見たことをノートに書きとめ、それをヒントに句を作っている」と話す。
宮坂静生さん、中島畦雨(けいう)さんの影響も大きく、宮坂さん主宰の「岳俳句会」同人でもある。中島さんから「句碑でも建てたらどうか」と勧められ、2007年ごろから石探しを始めた。自然石でという思いもあり、なかなか気に入ったものが見つからなかったが、昨年末、思い通りの石にようやく出合えた。友人が山にある池を壊した際に出てきたという。
17日に除幕式を行い、家族らがお祝いした。上條さんは「こんな人がいたという一つの足跡を残せた」と喜ぶ。「日記を書くつもりで、俳句はずっと続けたい。読む人の頭に風景や場面が浮かぶ句を詠みたい」。ますます意欲的だ。