土方歳三の刀か? 新選組の大ファン・佐藤肇祐さん入手

幕末に作られた実戦刀

新選組副長、土方歳三。新選組隊士の中でも人気が高く、幕末のヒーローといえる人物だ。ゆかりの物を持ちたいと思うのはファン心理だろう。松本市の会社員、佐藤肇祐(けいすけ)さん(47)もその一人だ。
子どもの頃から時代劇が好きで、侍や刀に興味を持ち、2011年から刀を集め始めた。これまでに20本ほどを手に入れた。その後、テレビ番組の影響で新選組に魅了され、土方歳三、近藤勇の大ファンに。土方の持った刀に憧れた。
「土方と同じ人が作った一振りが欲しい」。そんな思いを抱き続ける中、土方が所持したとされる刀に出合った。

刀剣店の非売品 ラブコール送り

刀の全長2尺7寸(約80センチ)弱で、持つとずしりと重い。切銘(きりめい)(刀に彫られた銘)には「為新選組副長土方歳三」とあり、作者「備前國長舩(びぜんのくにおさふね)住横山藤原祐永(すけなが)」「友成五十九代孫」、作った年月「文久三年八月吉日」が入る。新選組、土方歳三に魅了された佐藤肇祐さんが、念願かなって手に入れた刀だ。
佐藤さんは小学生の頃から、テレビの時代劇が大好き。中学生の時、坂城町出身で人間国宝の刀工、宮入昭平(行平)さんの刀を持ち、感動した。「すごく重い、美しい」。いつか自分も手に入れたいという思いが芽生えた。
願いが実現したのは2011年。当初から土方の愛刀「和泉守兼(いずみのかみかね)定(さだ)」と同じ刀工、11代兼定が作った刀を探し続けた。全国の刀剣店に電話をかけたり、インターネットで検索したりしたが、なかなか見つからなかった。
そんな中、土方歳三が「兼定」より前に所持したとみられる「備前-」を所有する京都の刀剣店の店主と知り合いに。非売品だが、欲しい気持ちは抑えられず、店を訪れ、何度も電話をかけるなど、ラブコールを送り続けた。「毎晩夢に見ます。ほれた女に会うくらいの気持ちで店に来ました」。そんな佐藤さんに店主も折れた。「長く京都にいたから、他に行きたくなったかもしれないね」。刀は佐藤さんに託された。新選組隊士、永倉新八の家紋が入ったこしらえ(鞘(さや)や柄(つか)など)が付く。

京都から松本へ ロマンが広がる

この刀は、11年に幕末維新ミュージアム「霊山(りょうぜん)歴史館」(京都市)のリニューアル記念特別展「徳川幕府と新選組」に出品された。来歴がかなり研究されている。
同館の学術アドバイザー、木村幸比古さん(73、同市)は「土方が所持したという(書類による)確証がなかったので(正式な出品でなく)参考品とした。幕末に作られた長物で、実戦用。切銘の土方歳三の名は後で入れた印象を受けたが、バランスのいい素晴らしい刀で、持った瞬間、土方が好みそうな刀だと分かった。土方の刀だった可能性は大きい」と話す。
切銘にある文久3(1863)年は、壬生浪士が新選組になった年。佐藤さんは「記念に土方が作らせたのでは」と推測する。切っ先は、研いで薄くなっており「実戦で使ったためではないか」とする。
縁あって、京都から松本へ来た刀。本当に土方の所持品だったのか。真贋(しんがん)の判断は専門家にも難しい。ただ、幕末を戦った刀、さらに土方の刀だったかもと思うと、ロマンが広がる。佐藤さんは「多くの人に見てほしい。幕末展などの機会があれば展示したい」と話している。