【記者兼農家のUターンto農】#52 春の恵み

うれしい、楽しい「おまけ」

この春も「おまけ」に恵まれた。
4月下旬、家の土手に山菜のコゴミが出てきた。緑の茎はつやつやと輝き、先端がくるっと丸まっている。春の息吹を吸って土から立ち上がり、伸びをするような風情がある。
その生命力を丸ごといただく。10センチくらいのを採って、ゆでてあえ物に。茎が柔らかく、苦みもえぐみも少ない。10本、20本はすぐに食べられる。
当の土手は北向き斜面で、建物の陰。日当たりは良くないのに、毎年、株が増える印象だ。時季には、採りきれないほどのコゴミが勝手に出て来る。
土手は、土地の縁取りのようなもので、普段は生産とは無縁な場所だ。むしろ生えた草を刈って処分するのが一仕事になる。
それが、この時季は春の味をたっぷり味わわせてくれる。ちょっと前は、フキノトウも出ていた。農繁期を控えて、ご褒美の前払いみたいだ。
もう少し手間をかける春の味もある。
ビニールハウスで、アスパラガスが育っている。とはいえ、ハウスの端も端、壁際ぎりぎりで茎を伸ばしている。中ほどの特等席は、稲の苗床が占めている。苗を育てる温室の居候。それがアスパラだ。
もとより自家用だ。父によると、以前は露地栽培した。やはり、垣根の際といった半端な土地で作っていた。
あまりうまく育たなかったらしい。調べると、雨よけを施した方がよいとのこと。アスパラは湿害に弱い。
自家用作物に手はなるべくかけたくない。ハウス内の壁際に引っ越しとなった。それが良かった。
父は、少しは肥料をやるなど管理をしているという。稲が芽吹くより前にアスパラの茎は食べられるまでに育ち、しばらくは次々と出て来る。大きさはふぞろいだけれど、産直の旬を味わえる。
余録も、農業をする楽しみだ。