光が透ける「薄挽」の器 木工家・髙原正勝さん

木を薄く薄く削って作った酒器は軽く、空にかざすと光が透けて見える。厚さ2ミリ弱、薄い所は0・5ミリ。安曇野市穂高有明の木工家、髙原正勝さん(71)は「薄挽(うすびき)」にこだわり続けている。
釣りが好きで、浮きを木で作ろうと、小さい旋盤を購入。ついでに作ったちょこを友人に贈って喜ばれ、木工家になる決心をした。
釣り好きだから工房名は「太公望」にちなみ「鯛(たい)工房」。材木店で出た端材、剪定(せんてい)木、家屋の廃材などが材料だ。「エコでしょ」と 髙原さん。
日本酒が好きで、マイちょこ持参で飲みに出ることもある。「飲み終わったとき、光の輪、希望の輪が器から透けて見えると、元気が出る。人を励ますことにならないかなと思ってる」と豪快に笑った。

自分流の技術で多様な形に挑戦

髙原正勝さんの工房「鯛工房」には、旋盤や刃物、作りかけの酒器など、さまざまな物が置かれている。もともとは釣り道具やステレオ、テレビなどを持ち込んだ“秘密基地”だったが、「いつの間にか工房になった」という。
子どもの頃から釣りが好き。茨城県つくば市の国土地理院に勤務した時、海釣りも覚えた。定年退職し、2011年に安曇野市にUターンした。
釣りの道具作りのために木工旋盤を購入。何げなく作ったちょこを友人にプレゼントしたところ「本格的にやってみては」と勧められた。当初は厚さ4~5ミリだったが、「人と同じものでは注目されない」と、3年ほど前から薄さを追求することにした。今では最も薄い部分で0・5ミリという。
技術は全て自分流だ。彫刻刀といった刃物も、既成品で思うように仕上がらないと、自分で作るようになった。「薄挽は、最初は五つ作って一つ成功すればいい方だった。今は失敗の方が一つになった」
ケヤキ、ヒノキ、ヒバ、栗、柿|など、使う木の種類はさまざまだが、ほとんどが端材や廃材だ。「燃やすのはもったいない」と 髙原さん。「木を削ると、思ってもみなかった木目が出てくる。猿の顔のようなユニークな模様が出てきたこともあり、それが醍醐(だいご)味(み)」
飲みに行くときの必需品は“マイちょこ”だ。その日の気分で1、2個持って出る。器の素材、形で日本酒の味が変わる。「木は、ガラスや陶磁器よりも飲み口が優しく感じる。香りを楽しみたいときは口が広がったちょこ、うま味を感じたいときは閉じたものがいいのでは」と話す。
「作ることが大好きで、できることは自分でやる主義」といい、薄挽の酒器にとどまらず、花台や箸置き、オードブル皿、茶筒、きゅうす形の酒器など、何にでも挑戦してきた。薄挽の木のランプシェードは、柔らかな雰囲気を醸し出す。どれも木目を生かして独創的な形にしてきた。
インターネットは利用せず、あくまでも対面販売にこだわる。「『こんなはずじゃなかった』」と言われることが心配だから」、目の前で利用者の反応をみたい。22日に安曇野市穂高の穂高交流学習センターみらいで開く「安曇野さんぽ市」に参加する予定だ。
外出する用事がなければ「365日工房にこもっていたい」という。生まれた家の木材や昔植樹した木など、記念や思い出に残したい木で食器などを作る注文も格安で受ける。「毎日楽しく、木と向かい合っていけることが一番いい」と言い、今後は「木でシャンデリアを作りたい」。 髙原さんの探求はまだまだ続く。
問い合わせはメール(tai-kobo@outlook.com)で。