「木と人」共に生きる文化を

特殊伐採士・アーボリスト岡上洋さん 山形村

高い木にクライミングロープですいすいと登り、木から木へ飛び移りながらチェーンソーを操る、岡上洋さん(39、山形村小坂)。クレーンが入れない狭い場所や斜面の木を、ロープワークを駆使して伐採する「特殊伐採士」であり、「アーボリスト」だ。自然との調和を考え、樹木の管理全般に携わる専門家だという。
4月上旬、同村清水高原に住む平野正春さん(74)の依頼を受け、敷地内の高木2本の幹や枝を伐採した。「あと1本切れる?」「この枝は残す?」と樹上と地上で声を掛け合いながら作業。終了後、平野さんは「空が広くなった」と笑顔を見せた。
日本ではなじみが薄いアーボリスト。存在を知ってもらい「木と人が共生する文化を広げたい」という岡上さんに話を聞いた。

海外での造園業 専門職魅力感じ

1級造園技能士の資格を持つ庭師だった岡上洋さんは10年ほど前、海外で働いてみようとニュージーランドやカナダに渡った。外国の造園業に触れる中で、樹木の管理を専門とし、人と木の共存を図る「アーボリスト」という職業に出合った。
木を大切にする考え方や、ツリークライミングの技術を使って高い木に登り、枝や幹を切る「特殊伐採」に魅せられ、アーボリストの資格を取得した。カナダに残って学びたいと、ビザ申請のために帰国。だが結局、家庭の事情で出国を断念せざるを得なかった。
そんな時、日本でも特殊伐採の講習などがあることを知り、新潟県に本社がある特殊伐採専門の会社「マルイチ」に就職。経験を積み「gomokugumi(ごもくぐみ)」の屋号で独立した。
電線や屋根に伸びた枝などの伐採、個人宅の樹木の管理、庭木の手入れのサポートなどを幅広く行う他、特殊伐採の指導や技術講習会での講師も務める。根底には「木と人が共生する文化を広げたい」という思いがある。
「大きく育った木を切り倒すだけでなく、木にとって良い剪定(せんてい)をし、里山などの環境を整備する。伐採した木を活用することで木を好きになり、大切にしたいと思うようになってほしい」

遊具や別荘改修 伐採木活用して

木に親しむライフスタイルを自ら実践している。2019年、オーストラリアで開いたツリークライミングの世界大会に出場、周りのクライマーに刺激を受けた。
その頃、木が生い茂る清水高原の土地が売り出されていると聞き「木登りの練習用に」と購入。妻の真梨さん(40)、八起(やおき)ちゃん(5)、起生(きなり)ちゃん(3)と家族で通ううち、子どもたちが休めるウッドデッキ、遊べるようにブランコ、シーソー、滑り台などを、次々と作った。
素材は伐採木を使い、「いずれ朽ちても薪になる」と柿渋で塗装。自然との共存を図りながら、アスレチックのように楽しめる「森の公園」を進化させ続ける。知人らも訪れ、子どもたちが遊んだり、大人がゆったり過ごしたりする。
近くに「木の仕事をしている人に買ってほしい」という別荘が売り出され、価格交渉などを経て入手。村内で伐採した木を使いロフトを作るなどリノベーション中で、「ここに人を呼び、講習会やワークショップ、展示会などの会場にできれば。図書館も作りたい」とさまざまな活用法を考えている。
樹木を管理しながら伐採木の活用を続ける岡上さん。「こんな楽しみ方があると多くの人に知ってもらい、木と人が共生する文化が広がれば」と話す。gomokugumiはこちらから。岡上さんTEL080・6997・2858