【小林千寿・碁縁旅人】#27 フランス

ル・ヴェジネの自宅の隣家の石壁に咲く藤の花

5月の木々と花々

3年ぶりに自由に移動できたゴールデンウイークは、日本中が大混雑し、みんな嬉(うれ)しそうに休暇を満喫されていました。
松本に暮らすようになって気づいたのは、春に一気に木々が芽吹き、花々が咲く様子が、欧州と似ていることです。
フランスでは2~3月に黄色い花・ミモザが咲き、春が訪れます。南仏のミモザは日本の桜の木のように大木で、山ごと咲く「ミモザ街道」もあります。2月にカンヌで「ゲームフェステバル」があった時に足早に車で案内されたことがありますが、いつかゆっくり旅してみたいところです。
そして、5月1日に親しい人にスズランの花を贈る習慣があります。パリ郊外に住み始めた時に、お隣のフランス人夫妻がスズランのブーケを手にわが家の玄関を訪れ、お茶に誘ってくださった思い出は忘れられません。
住んでいたのはル・ヴェジネという住宅地です。凱旋(がいせん)門の最寄りの電車駅から西へ20分、大木の多い自然豊かなところです。その先10分、電車に乗るとサン=ジェルマン=アン=レーというルイ14世が生まれた古い街があります。
ル・ヴェジネ地区には大きな公園があり、大豪邸も多く、英国人がつくった街の歴史がまだ残り、庭に花々、草木が多く散歩に最適です。ただフランス人は庭の手入れをあまりしないのか、草木は自然な感じで茂っています。例えばわが家の隣の藤の花。見事に石積みの壁を伝って咲き、日本では見られない1枚のフランス絵画のようです。
いろいろな国々の家、庭園、公園を見るのは楽しいです。特に5月は春爛漫(らんまん)で、どこを見ても素晴らしいですが、京都の「青紅葉」も大好きです。
このゴールデンウイークは、長いコロナ禍、世界の問題をいっとき忘れ、大自然の恵みの中で癒やされました。普通の生活に心から感謝感謝。元気をたくさんもらって明日も頑張りましょう!(日本棋院・棋士六段、松本市出身)