ラーメン店主可能性広げて 多彩な挑戦西沢さん

「原点は好奇心」やりがい感じ

清涼感のある泡と共にヒノキの香りが口に広がる。さまざまなスパイスと自然な甘味が融合し、さっぱりした後味だ。手作りコーラとして人気が高まる「クラフトコーラ」に、木曽ヒノキの廃材を活用した。
提供するのは、カフェでもレストランでもなく、松本市白板のラーメン店「とり麺※1や五色」。クラフトコーラはオーナーでラーメン職人の西沢寬※2佳(のりよし)さん(41、安曇野市穂高)が開発した。
鶏白湯(パイタン)ラーメンが看板メニューだが、クラフトコーラのほか、予約制で客の要望を受けた創作コース料理を作るなど、枠にはまらない営業を展開する。
開店13周年を記念し、オリジナルの詩から着想したラーメンを期間限定で提供。多彩な活動をする西沢さんの原点とは─。

木曽ヒノキ風味のクラフトコーラ

食欲をそそるスープのだしの香りが漂う店内。西沢寬佳さんが「自信作です」と、木曽ヒノキ風味のクラフトコーラを出した。クラフトコーラは4、5年前から果物などで試作してきたが納得できる味にならず、木曽ヒノキで成功。1杯400円で提供し、ゆくゆくは木曽地域の特産品にしたいという。
開発のきっかけは昨年、木曽漆器青年部が漆器を店舗などに貸し出すサービス「かしだしっき」を、西沢さんが利用したことから。その後、工房を見学し伝統工芸の技術や職人の心意気を実感した。自身が何か役に立てないかと考え、ヒノキ風味のクラフトコーラを思い付いた。
かしだしっきを担当する「木曽くらしの工芸館」の百瀬友彦さん(38)の紹介で、捨てたり燃やしたりしていたヒノキの廃材を集め、クラフトコーラの材料にした。「飲み物に活用してもらうのは初めて。産地としてうれしい」と百瀬さん。

西沢さんは坂城町出身。実家が食堂を営み小さい頃から手伝った。高校卒業後、長野市の料理専門学校を経て市内の中華料理店や上田市に本社のある多国籍料理店で働いた。
居酒屋として独立しようと思っていた時、鶏主体のラーメンを食べ、そのスープの味に衝撃を受けた。自分もこの味を出したいとラーメン店開業を決意した。
多国籍料理店で働きながらスープの作り方を研究。職場の異動で移住した松本市で28歳の時、化学調味料不使用で地産地消と健康志向にこだわったラーメン店を開いた。

コース料理や記念メニュー

4、5年前、常連から「この店の料理で結婚の両家顔合わせ会をしたい」という要望があり、コース料理を提供した。その後、「お客さんの食べたい品を出すラーメン店があってもいい」と、多国籍料理の経験を生かし予約制で受けるように。卵アレルギーの人に卵不使用のラーメンを作り喜ばれるなど、経験を重ねている。
「原点は好奇心」と西沢さん。自分が食べたいもの、お客さんが食べたいものを想像し、形にするのが楽しいという。対面営業で反応を肌で感じられるのもやりがいだ。
新たな挑戦として、詩人のウチダゴウさん(安曇野市穂高)に制作依頼した詩をラーメンで表現する。14~27日、開店13周年記念メニューとして提供する。
「これからは他店がやっていないことに積極的に取り組みたい。そこで得る反応が次の原動力になる」と西沢さん。他分野とつながる“調味料”でラーメン店の可能性を広げていく。

【メモ】
【とり麺や五色】午前11時半~スープ終了(最長午後9時)まで。火曜、第4月曜定休。TEL0263・33・0853

【 ※1 】麦の旧字体の右に面
【 ※2 】寛の目の右下に「、」