オールドレンズやフィルムカメラ愛用 レトロな魅力写真で表現

フォトグラファー 木暮嘉胤(こぐれひろかず)さん 松本市

スマートフォンで写真が撮れる、一眼レフカメラでオートフォーカスが使える─。便利に、手軽に写真が撮れる今、あえてオールドレンズやフィルムカメラにこだわり続ける人がいる。フォトグラファー木暮嘉胤(こぐれひろかず)(本名・高山浩一)さん(60、松本市宮田)だ。
現在、カフェ「BELL WOOD COFFEE LAB(ベルウッドコーヒーラボ)」(安曇野市豊科)で作品展を開いている。松本や安曇野など、何げない街の風景を切り取った写真。高山さんのフィルターを通すとどこか懐かしく、独特な雰囲気に仕上がる。
作品には必ずサインを入れ、短歌を添える。これもこだわりだ。「見たままの風景を残すのではなく、個性を大切に、アートにこだわった自分の世界を残したい」。街角の隠れた魅力に気づくかもしれない。

アートにこだわり独自の世界

安曇野市の自家焙煎(ばいせん)コーヒーショップ「BELL WOOD COFFEE LAB」で開かれている写真展「レトロスペクティブ・ロマン」。20点余が展示されている。カモの親子、松本市あがたの森公園など見慣れた被写体なのに、どの作品にも不思議な味わいがある。
松本城に向かって歩く女性の後ろ姿をとらえた「松本城見上げてきりり」には、「美しい出で立ちさらら旅をんな見上げてきりり松本城を」の短歌を添える。フィルムカメラのオリンパスペンFとzuikoレンズを使った作品だ。
「松本城を撮ろうと思っていたら、吸い寄せられるように女性がファインダーに入ってきたその一瞬を撮った」と木暮嘉胤(高山浩一)さん。
子どもの頃、木の雨戸に開いた穴をのぞいたら、すりガラスに外の世界が逆さまに見えたことが、カメラに興味を持った原点だ。高校時代、友人の持つカメラに衝撃を受けた。「露出計の針の繊細な振れにどきどきした」
大学でミノルタXDを買い、写真部に所属した。暗室にこもり、出てくる画像にわくわくしたという。松本にUターンした後も、写真クラブに入り、撮影活動を続けた。

中国へ行き転機懐かしい風景を

30年ほど前、松本日中友好協会で中国に行ったことが転機となった。「日本では見られない懐かしい風景」と、短い時間の中で、集中して決定的瞬間を狙った。「集中して、いい写真を撮った時は、被写体がスローモーションに感じる。一発勝負」と木暮さん。
「今のレンズは、性能が良く、同じように写り、独特の個性や癖がない。レンズによって味が違う。それを体験したくて」。昔のガラスのレンズは、解像度が高く味わいが出るという。カメラはデジタルも使うが、好きなのは1960~70年代のマニュアルフィルムカメラだ。
レンズの数を聞くと、「“沼”にはまって、その数の多さに気持ち悪くなる」。ほとんどがオークションを利用して手に入れる。100年ほど前のものもある。16ミリ映画の撮影に使うシネレンズはユニークだ。「中央は解像度が高くきれいに撮れるが、周りは暴れる。それが面白い」
短歌は数年前に始め、サインとともに作品に添える。写真は意図があって撮っているので、短歌にしやすいという。「表現の形は変わっても、伝えたいことは同じ」
顔料インク、フォトグラフィックペーパーは品質にこだわり、仕上げに妥協はない。印刷会社プラルト(松本市笹賀)に勤務し、写真集やカレンダー、画集などを手がけていて、「どこまでが仕事でどこまでが趣味か境界線が難しいが、ものを作り出す仕事は楽しい」。いつか街角の魅力を詰め込んだ自身の写真集を作るのが夢だ。