大型連休中の北ア穂高連峰 にぎわい 涸沢カール

400張りテントの〝団地〟

春山シーズンの幕が開き、北アルプス穂高連峰・涸沢カール(標高2300メートル)の残雪の上に大型連休中、カラフルなテントの“涸沢団地”が出現した。3~5日、テント場の夜景や満天の星空、モルゲンロート(朝焼け)の光彩を撮影。氷河の大地・涸沢で出会った登山者の「人模様」と合わせて紹介する。

感動を共有“人模様”

【天に続く精霊の道】
4日午前2時半。気温氷点下3度。夜半に吹き荒れた強風が穏やかになり、テント場に明かりがともる。赤、黄、青…。おとぎの国を連想させる400張りのテントの明かりが周囲の雪上を幻想的に染める。
背景の暗闇にかすかに浮かぶ標高3000メートルの稜線(りょうせん)に向かい、2本の光が延びる。右は北穂高岳、左は奥穂高岳へ向かう登山者の明かりだ。まるで天に続く神聖な「精霊の道」のように見えた。

【登山者の人模様】
▽3日午後5時。ソロテントでステーキを焼き、夕食の準備をする男性にカメラを向けた。「召し上がりますか?」。優しい声が返ってきた。隣のテントの男性と女性に声をかけ、雄大な穂高に抱かれてのステーキパーティーになった。下山後、教えてくれた名前を調べてみると、2019年秋にヒマラヤの世界第5位の高峰マカルー(8463メートル)西稜から単独無酸素で挑戦した登山家・武田真敏さん(36、静岡市)だと分かった。
▽4日午前7時18分。涸沢ヒュッテの玄関前で、登山者の要望に応じ、快く一緒に写真に納まる登山家の高橋和之さん(78、安曇野市穂高)の姿があった。登山用品店「カモシカスポーツ」創業者で「ダンプさん」の愛称で親しまれる。ヒマラヤ・ローツェ峰(8516メートル)への日本人初登頂などで知られ、松本平タウン情報(MGプレスの前身の一つ)の企画「私の半生」にも登場(16年5月から31回掲載)した。
▽4日午前8時半。家族4人でテント場を散策するほほ笑ましい姿を捉えた。「夫婦で描いてきた夢がようやく実現しました」と京都市の梅原良太さん(38)は、うれしそうに話す。「子どもが大きくなりテント泊で連れて来られるようになりました」と妻の梓さん(37)。長女の環奈ちゃん(5)は歩き、次女の芽依ちゃん(3)は梓さんが背負い下山した。
▽4日午後2時15分。連休期間中に開設された県警の登山相談所では、宮﨑雅史さん(28)が登山者の「雪崩の心配は?」「コースはどこを」といった相談に丁寧に応対。北穂高岳に登り、テントに戻った登山者は「昨日のアドバイスが参考になり、心強かった」と感謝していた。
▽4日午後4時7分。雪のテーブルを囲み宴会真っ最中の愛知県豊橋市の豊橋山岳会16人の大パーティーに出会った。北穂高岳に登頂し、みんな笑顔で明るい声が弾む。ここに集い、感動を共有した思い出はやがて人生の宝物になるだろう。通り過ぎていく時の流れが見えるような涸沢の午後だった。

(丸山祥司)