歌の力信じ年1回の大舞台

大町で折弁カラオケグランドチャンピオン大会

なぜ人間は生きていくのでしょう…自分の歩幅で急がずに過ぎていく月日に運命を預ける…
大町市文化会館大ホールに響いた芯のある歌声は、歌詞と共に聴衆の胸に迫った。
同市大町の仕出し、宴会料理などの「折(おり)弁(べん)」が毎月開くカラオケ大会の、年間王者決定戦「グランドチャンピオン大会」。7日に開かれた27回大会王者に、中倉陽子さん(70、新潟県糸魚川市)が輝いた。選曲した有沢美智子さんの「私の翼」は「人生の応援歌で、コロナ時代に勇気を与えられる歌詞」。大舞台で歌える喜びや感謝を込めた。
「大町を元気に」。折弁支配人の荒川松子さん(77)が発案し、27年前から始まった月例大会は300回超。新型コロナ下で悩みながらの開催だが、歌の力を信じて前へ進む。

感染対策し開催中信以外からも

大町市大町の「折弁」で毎月開かれるカラオケ大会。マイクを握り熱唱する愛好家が目指すのは、年に1度、大町市文化会館で開く「グランドチャンピオン(グラチャン)大会」の出場権だ。月例大会上位入賞者のみが立てる、特別な大舞台。これを張り合いに病気に打ち勝つ気力が湧いた人、中信地区外から通う人もいる。
審査員は、地元の経済団体や金融機関、地域組織の代表者らが月替わりで務め、グラチャン大会では勢ぞろいする。
料理を味わい余興や交流も楽しむ月例大会は、27年前から続く。コロナ禍で中止もあったが、仕切り板の設置、マイクの消毒やカバー交換など感染防止対策を講じて続けている。グラチャン大会は、例年1000人超の聴衆の定員を半分に減らし、今回は出場者30人で開いた。

前に進むためにさまざまな思い

本番当日、舞台裏の楽屋には、きらびやかなドレスを着て、舞台映えするメークを施した女性や、はかまの男性の姿もあった。出場者同士で談笑する傍ら、前の晩は一睡もできなかった女性もいる。「今年は入賞したいと欲が出た。懸命に練習したのに本番で声が出るかしら」。仲間に肩をもんでもらい、気持ちを落ち付けて舞台に向かった。
安曇野市豊科の関建律(たつのり)さん(73)は25回目の出場。ベテランだが「今年は何としても(グラチャンを)取りたい」。真っ白な衣装で堂々と歌い上げた。
「夫を数年前に亡くし、寂しさから救ってくれたのは歌。(歌うことを)応援してくれた夫に届くように歌いたい」。松本市寿北8の髙山政子さん(71)は笑顔で熱唱した。
楽曲に合わせてよさこい風の衣装をまとった松川村の海川千鶴さん(64)は、優秀賞を受賞。「ノリノリで踊ってしまいました」。大町市平の福島和美さん(50)は扇を手に「月下美人」(和楽器バンド)をしっとりと聞かせ、客席でペンライトが揺れた。「非日常的で楽しい」。勤め先の同僚という2人は「私たちにも地域にも活力になる」と開催に感謝した。
92歳の熱唱あり、「折弁一座」の余興あり、抽選会ありの大舞台を仕切ったのは、大会長の荒川松子支配人(同市大町)。閉幕後、疲れを見せつつも「出場者や観客からの感謝の言葉がうれしく、張り合いになる」と笑顔だ。
新型コロナ下で大会開催は難しい選択だったが「一度やめたら前に進めない。歌が聞けなくなるのも、皆さんに会えなくなるのも寂しい」。
気丈な荒川さんも「つらい時は車を運転しながら『生きてゆくのがつらい日は~』と歌ってますよ」。歌の力を実感する一人だ。
月例カラオケ大会は、毎月第4金曜午後6時から。4000円。要申し込み。折弁TEL0261・22・2891