【ガンズリポート】マッチレビュー 9節・15日 長野0-0山雅

信州サッカーの熱い夜

観客席とピッチの気迫が呼応し、満場の熱気は最後まで途切れなかった。1993年5月15日に始まったJリーグで、30年目の同じ日に初めて実現した「信州ダービー」。信州サッカーに新たな節目が刻まれた。

選手の幸せな空間サポーターが後押し

1週間前、サンプロアルウィンでの県選手権決勝を1|0で制した松本山雅FCが、AC長野パルセイロの本拠地、長野Uスタジアムに乗り込んだ。
「リーグ戦が本番」と異口同音に話していた両チームのサポーターらも集結した。前週の1・6倍の1万3244人。うち、山雅サポーターは3219人と発表された。
緑とオレンジに染め分けられた観客席の境界辺りからも、山雅サポーターの応援に合わせて手拍子が起きる。キックオフ前の練習から、互角の大音響で応酬した。
後押しされ、選手は激しく球際で競った。山雅が受けたファウルは前週の3倍。何度も倒されたMF安東輝は、それでも「選手として幸せな空間をつくってくれた」と、応援に感謝しながらプレーしたという。
「ここでやりたいだろ。努力しよう」。山雅の名波浩監督は、試合の運営を手伝うパルセイロの育成組織の選手に、思わず語りかけた。「俺もやりたい」
パルセイロのシュタルフ悠紀リヒャルト監督は試合後の会見で、真っ先に山雅サポーターへのリスペクトを口にした。「信州人と言った方がいいのか。この県にあるサッカーのポテンシャルを感じた」
静岡やイタリア、ドイツのダービー熱を知る2人の指揮官に、勝敗やチームの垣根を超えて、一戦を堪能する瞬間があった。この夜の勝者はスタジアムだった。