ワゴン車で無農薬野菜の移動販売

野菜の魅力対面で伝えたい

地元においしい野菜を作る人がいるのに、近くの消費者に届いていない─。松本市中川の織田倉(おだくら)悠さん(39)と恵理さん(43)は、地元の農家と消費者の橋渡し役になりたいと、松本や安曇野の無農薬野菜を軽ワゴン車に積んで、同地域で移動販売する「noradoko(のらどこ)」を今年1月から始めた。
車のバックドアを開けると、荷室に1畳ほどのミニ商店が登場する。陳列棚には農家から直接仕入れた旬の野菜のほか、無添加の調味料、雑穀、天然酵母パンなどの食材が並ぶ。食や農に関する書籍もある。
食の大切さを伝えたい ─ 。商品一つ一つに織田倉さん夫妻のこだわりがある。「口下手が多い農家さんに代わって、野菜の魅力を対面で伝えていきたい」

コロナ禍で思いが形に

織田倉悠さんと恵理さんは東京電力福島第1原発事故をきっかけに、2012年に横浜市から県内へ移住した。
「松本周辺は無農薬野菜の作り手との距離が近く、とても豊かな場所」と悠さんは評する。それなのに、地元の野菜が買える場所が少ないのがもどかしかった。
茨城県出身の悠さんは、実家が稲作中心の兼業農家。学生の頃から食材の販売に興味があり、移住前は食専門の出版社「柴田書店」(東京)で働いていた。コロナ禍で考える時間が増える中、以前からおぼろげに思っていた「八百屋をやりたい」という希望を、2人で形にしようと起業した。

会話楽しみ書籍も提案

グラフィックデザイナーだった恵理さんは、のらどこのロゴやチラシを制作する。移住前から東京の料理家に農薬や添加物を使わない食材をシンプルに調理することを学んだ。体を温める食事を続けていたら、不順な生理が整うようになり、念願の子どもを授かった。今は4歳と11カ月の子育てに追われる日々だが、ゆくゆくは店頭に立ち、手作りの総菜を販売したいという。
本の仕入れは悠さんの担当。「丁寧に作られた本は野菜と同じ。食をもっと豊かにしてくれる本を提案したい」
野菜を扱う農園の一つ、「ふぁーむしかない」(松本市)の鹿内治樹さん(41)は、かつて自分で出店販売したことがあるが、「農繁期に畑を離れるのはすごく大変。代わりに売ってくれるのはありがたい」と話す。
のらどこがまだ構想中だった昨年は、1年を通して2軒の農家で農作業を手伝った。その体験がお客へ畑の様子を伝えるのに生きている。
「野菜や本を介してお客さんと会話ができて、とても楽しい」と悠さん。目指す商圏は、移動販売で訪れた先々で半径約500メートルにすること。地域の人が歩いて買いに来てくれるのが理想だ。

【のらどこの出店情報】▽月曜午前10時~正午安曇野市穂高有明の安曇野ハーブスクエアで行われる「エコサスマルシェ」▽同午後1時半~4時半同市明科中川手の「龍門淵てらす」前▽金曜午後3~6時松本市筑摩4の「marsmoo(マーズモー)」駐車場―に定期出店する。飲食店への卸しも行う。イベント出店など詳しくはインスタグラム=QRコード=で。問い合わせはメール(noradoko808@gmail.com)で。