【野遊びのススメ】#28 山菜採り・新緑味わう自然の恵み

新鮮な山の空気もごちそう

直売所などで山菜を見かける季節になった。食べる専門で種類も詳しくないが、山菜採りの現場を見てみたいと思い、大型連休明けに松本市奈川へ向かった。
案内をお願いしたのは、ながわ山彩館や高ソメキャンプ場などの施設管理運営、農産物の生産販売、奈川地区の観光案内などを手がける「ふるさと奈川」社長の奥原仁作(にさく)さん(72)。子どもの頃から山菜採りをしている達人だ。あいにくの雨だが、かっぱを着て、奥原さんが所有する山へ軽トラで向かった。
到着すると奥原さんは早速、荷台から長い木の棒を取り出した。先端がかぎ状になっている。それを近くの木にひょいと引っかけ、手前にたぐり寄せて芽先を摘み取る。「タラノメだよ」。独特の良い香りがする。
急な斜面を登っていくとコシアブラを発見した。これも棒で枝を引き寄せ、若芽を折るように採る。「木の芽は少し残しておくことが大事。全部採っちゃうと、新しい芽を出そうと木が弱ってしまう」。自然の摂理に従う大切さを感じた。
日当たりのいい斜面に出ると、小さいワラビが顔を出している。付近には茶色い枯れた葉が。「これは去年出て枯れたやつ。地下茎で増えるから同じ所に今年も出てくる」
あちこちにつるを伸ばしているのはカラハナソウ。「軟らかい芽の先を摘んで、天ぷらやおひたしにするとおいしいよ」。他にもヤマブドウの芽、シャク、フキ、ヨモギ、ワサビ、アザミの新芽など続々。「食べられるものはいくらでもある」と奥原さん。
眼下には絶景が広がっている。「山に来て自然の営みを見て、新鮮な空気を吸うだけで健康になる。採れた物はその副産物」
山彩館に戻ると、収穫物を天ぷらにしてくれた。揚げたてのタラノメとコシアブラを、何も付けずに一口。軟らかくて甘味があり、山菜らしいほろ苦さも後から追いかけてきた。
タラノメはごまあえや卵とじ丼など、コシアブラはおひたしや、ツナ缶とごま油と合わせてまぜご飯にしてもおいしいという。「でも、山菜はあくがあるのでほどほどに」
標高1200メートルほどの奈川地区は昼夜の寒暖差が大きく、山菜は甘味とこくがあるという。鮮やかな新緑を見ながら、改めて自然の恵みに感謝した。

【装備と注意点】
◆装備 靴は裏がしっかりとしたトレッキングシューズや長靴、スパイク付き地下足袋など。服は枝に引っかかりやすい物は避け、足・袖・首元を露出せず、虫が入らないようにする。帽子をかぶり、滑り止めがあるゴム製手袋をする。山菜を入れる袋はビニールだと鮮度が落ちるので、びくを腰に付けるといい。

◆注意点 ▽知らない山菜はおいしそうでも採らない。疑問に思ったら専門家に聞く。例えばオオバギボウシ(ウルイ)に似たコバイケイソウは毒草。
▽収穫適期のものを必要なだけ採る。小さいものは採らず、次の人に残しておく。
▽1人で山へ入らない。採る場所を知っている人と行くのが一番。入山禁止の場所もあるので、地元自治体や観光協会などに確認を。自分のいる位置を把握し、仲間と声をかけ合う。携帯電話を必ず持ち、行動食や水分も用意して山へ入る。万が一に備え笛を持ち歩くのも良い。
▽ウルシやヌルデなど触るとかぶれる木、クマや毒ヘビに注意。ネマガリダケはクマも好物。
ふるさと奈川TEL0263・79・2500