開かずの老舗店舗20年ぶりに差す光 ぬの源「六九工藝祭」展示場に

歴史重ねた建物 新たな可能性

20年以上、開かずの扉だった店舗のシャッターが28日、開く―。
松本市の中心市街地、六九商店街一帯で28、29日、工芸品などを展示・販売する「六九工藝祭」が開かれる。2012年にスタートした「六九クラフトストリート」を引き継ぐイベントだ。
再び開くシャッターは、来年で創業100年を迎える老舗化粧品店「ぬの源」の旧店舗。工藝祭の目玉の展示場として活用する。
大正、昭和、平成、令和と四つの時代を経た店舗は、石積みの基礎がむき出しになるなど築100年の歴史と重みを感じさせ、「現代工芸」との組み合わせに興味を引かれる。
2年前から同店を経営する松井綾音さん(33)は「(旧店舗の)新たな可能性が見つかるかも」と期待している。

商店街寂れ移転 将来に向け整理

ぬの源(松本市大手2)は、1923(大正12)年に横山米雄さん(故人)が創業。その後、息子の進一さん(93)とその妻・月子さん(91)が引き継いだ。
現在は、2代目の孫、松井綾音さんが、夫・宏樹さん(39)と一緒に店を切り盛りしているが、月子さんは今でも店の“看板”として店頭に立つ「レジェンド美容部員」だ。
創業当時、同店は六九商店街沿いに北向きに店を構えて営業してきた。2000年、商店街の衰退などにより、それまでの店舗を閉店。同時に、旧店舗と背中合わせになるように、女鳥羽川沿いに南向きの新たな店舗を出した。以降、旧店舗の正面はシャッターが下りたままになっていた。
旧店舗内もかつて使った器具類などで「物置状態」になっていたが、昨年、松井さん夫妻が、「旧店舗の将来を考えるためにも、まずは整理」と片付けを行った。

装い新た工藝祭 人を呼ぶ目玉に

六九商店街のにぎわい創出などを目的に、松本市の中心市街地一帯で工芸品の展示・販売などを行う「工芸の五月」に合わせ、12年にスタートした「六九クラフトストリート」。当初10回開催を目標としていたが、9、10回目に当たる20、21年がコロナ禍で中止になった。
そこで今年、「選者の眼が日本の工芸に重要な役割を担ってきた」とするクラフトストリートの世界をさらに深めることを目指し、名称を「六九工藝祭」に改め、再スタートすることにした。
六九商店街に木工作品のショールームを構え、工藝祭実行委員会代表を務める前田大作さん(46)がイベント本番に向け、催事会場や駐車場などを確保するため、ぬの源を訪れ、協力を求めた。
その場で宏樹さんが、前田さんに「旧店舗内を片付けて、空間が生まれたが見てみるか」と提案。店舗内を見学した前田さんは、一目でその空間にほれ込んだ。
「壁や床など建物の100年の歴史がレイヤーのようになっていて、工芸や手仕事品を展示するには理想郷に思えた」と前田さん。工藝祭の展示会場に決めた。
工藝祭当日、ぬの源の会場では、東京の工芸品を扱うギャラリー2店が出店する予定だ。
前田さんは「県外からも多くのお客が来る。ぬの源会場は、最高のおもてなしになるのでは」と期待。綾音さんは「工藝祭の会場になることで、旧店舗の新たな将来が見えるかもしれない」と心待ちにしている。
六九工藝祭の詳細は「2022六九工藝祭実行委員会」で検索。