山小屋の風物詩、布団の天日干し(北ア穂高連峰・涸沢)

快晴の朝、残雪の奥穂高岳(左)と涸沢岳を背景に布団が飛ぶ涸沢ヒュッテの天日干し作業=ニコンD5、ニコンEDニッコール28―70ミリ、5月5日午前7時45分

安眠に導くふわふわ布団の秘密

大型連休でにぎわう北アルプス穂高連峰の涸沢カール。快晴の5月5日朝、氷河の大地の底にある涸沢ヒュッテ(標高2300メートル)の屋根に天日干しをするカラフルな60枚の布団の花が咲いた。
3000メートルの残雪がまぶしい穂高連峰と大屋根に敷いた布団の花園との共演は、春山の風物詩の光彩を際立たせた。
布団干しは、スタッフが総出で行う。まず各客室の窓からひさし部分に布団を出す。さらに大屋根に上げ、敷き詰めていく。
突然、奥穂高岳を背景に布団が飛んだ!大きな布団を抱え屋根を歩くとつまずいたり滑ったり危険が伴う。空飛ぶ布団は、安全対策からベテランスタッフが考えたヒュッテならではの光景だった。「登山者に少しでも清潔で快適な環境を-と布団干しは月に2回行っています」と小林剛社長(58)。殺菌・消臭効果がある紫外線が強い山の日差しの中で天日干しした布団はふわふわだ。お日さまのにおいが心地よい。
お日さまのにおいの正体って何?調べてみた。大手化粧品メーカーの研究分析によると、布団の繊維に含まれるセルロースなどの物質と、太陽光の紫外線が化学反応を起こし、脂肪酸やアルデヒド、アルコールなどに変化したときに微量に発生する揮発性物質のにおいだという。
山小屋が何度も布団の天日干しをするのは、登山者の安眠への思いやりの光景だった。
(丸山祥司)