
安曇野市内で「ひげじい」といえば「この人」というほど、愛称とその風貌が知られている等々力秀和さん(81、豊科南穂高)。長年、地域づくりに尽力する中で、ライフワークにしているのが、中信地区に伝わる「方言の継承」。地元ラジオ局から自身が手がけた「方言にこだわった台本」を使って、その魅力を発信する現場を訪ねた。
夢は「方言の辞書」出版
等々力さんが担当するのは、あづみ野エフエム(明科七貴)の臼井則孔さんがパーソナリティーを務める「“のんのん”のミラクル☆ステーションDX」(毎週木曜午後4時)の一コーナー「ひげじいと安曇野ゆかいな仲間たち」だ。方言にこだわった台本は、友人の横田耕太郎さん(59、穗高有明)も制作に協力。これまでに300本以上を手がけた。
23日は、「ひげじいと―」の収録日。等々力さん、臼井さん、横田さんらがスタジオに集合。「安曇野の水」などをテーマにしたこの日の台本は、等々力さんの作品。
「何しただ?」「ウグイって赤魚のことずら」「らちがあかねえじ」など、随所に方言をちりばめながら、「日常会話」の雰囲気が漂う番組を成立させた。
ラジオで取り上げるテーマは「泉小太郎」などの民話から、子どものころの思い出、日頃感じていることなどさまざま。こうしたことを話すうえで、自身の思いを伝えるには方言が不可欠で、「標準語だと味気ない。いつも当たり前に使っている言葉を使いたい」と力を込める
自身が顧問を務める「安曇野案内人倶楽(くら)部(ぶ)」で、観光客らに案内する際も方言を使う。「安曇野をより身近に感じてもらう方策の一つが方言」とし、「それ、どういう意味?」などと、聞き返してもらうことをきっかけに、コミュニケーションが深まり、場の雰囲気も和むという。
「地域のことを地域の言葉で話すと、話しやすいし、聞く方も耳に入りやすい。言葉の魅力が、地域の魅力も伝える」と方言の持つ力を力説する。
旧豊科町(現安曇野市豊科)の重柳地区長、豊科区長会長を歴任し、合併による市発足後は、市区長連絡協議会を立ち上げ、初代会長を務めるなど、地域づくりに尽力。現在でも名刺には「松本地域景観育成サポーター運営委員長」「安曇野市日赤奉仕団顧問」など、10以上の役職名が。
会議が幾つも重なる日もあり、「忙しくて大変せ」と弱り顔。それがやりがいでもあり、「やりたいことはいっぱいある。若くいられるのも、忙しいせいかな」と笑う。
今後、「ずく」や「ささらほうさら」「おんじょ」など、中信地区に伝わる方言を標準語に言い換え、意味も解説する「方言の辞書」を出版することが夢という。傘寿を過ぎても衰え知らずの「ひげじい」の挑戦は続く。