【上高地の春の妖精・前編】容姿多彩なミドリニリンソウ 幸せを呼ぶ緑の花

葉に紛れて咲く花を探す

春の上高地を代表する花で、妖精の雰囲気を漂わせて群生するニリンソウ。かれんな魅力に取りつかれ、撮影を続けて半世紀になる。白、緑、ピンクといった色や、形状に変異体が多い花にこだわり、カメラで迫り続けてきた。前編「ミドリニリンソウ」と後編「白・ピンクのニリンソウ」の2回に分け、多彩な花風情を紹介する。
【ミドリニリンソウとは?】ニリンソウは、キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。草丈は15~25センチ。名前は、1本の茎に2輪の花が咲くことに由来する。
ミドリニリンソウは、花弁のように見える白い萼片(がくへん)が、緑に変わったものを指す。萼片の変異が大きく、丸まった形状のもの、葉のように雄しべの弁化が進んだもの、白と緑の混合型など複雑で多彩だ。
原因については「先祖返り」や「突然変異」が以前から定説のようにいわれ、近年は「マイコプラズマ(細菌とウイルスの中間に位置する微生物)による感染症」という説も加わったが、詳しいことは分かっていない。
登山道沿いの林内に、白い星の砂をまいたように咲き乱れるニリンソウの群落の中で、ミドリニリンソウは目立たず控えめに咲く。緑の葉に同化して見つけにくいことから、「幸せを呼ぶ奇跡の花」または「見つけた人は幸せになる花」ともいわれている。見つけた瞬間、確かにうれしさと癒やしを感じる。
【幸せの緑の花探し】記者は、上高地でミドリニリンソウを撮って31年。2009年には個体数を調べ始め、明神から徳沢まで約3・7キロの登山道を、両側約3メートルの林内を目視確認しながら4時間かけて歩き、カウントした。初年は548輪。2011年は621輪。中間地点に近い古池の群落では、1メートル四方に25輪が密集する場所もあった。2019年は578輪だった。
今年の調査は、一番花と二番花がにぎやかに咲きそろった5月20日に行い、滋賀県から訪れた栗本龍蔵さん(53)、千春さん(53)夫妻と、浜松市の永井知香枝さん(60)が協力してくれた。結果は過去最高の853輪を数え、最も密集した箇所は1メートル四方当たりに21輪あった。
「雄大な残雪の穂高連峰を仰ぎ、足元に咲く幸せの花探しができる上高地の春は最高」。千春さんは、うれしそうに話した。
【ミドリニリンソウの探し方】ニリンソウの群落を前にすると、ぱっと見た印象で白い花だけが目に飛び込んでくるため、ミドリニリンソウは見えにくくなる。人の目はカメラと違い、視野に入っていても、見つめた所にしかピントが合わない。焦点を白い花から意識的に外して緑の葉に合わせ、目線を緑から緑の領域へと移動させていくと、比較的見つけやすい。

(丸山祥司)