理想の保育実現へ ひかりテラス保育園

みんなが集える場所目指して

塩尻市に、大きな夢への第一歩となる小さな保育園がある。2歳児以下の19人を預かる民間の認可保育園「ひかりテラス保育園」(広丘高出)だ。
経営者として運営に当たるのは、有賀由紀子さん(40、同市)と竹内敦子さん(40、松本市)。ともに看護師、保健師として働き、同じ職場で知り合って以降、「自分たちが理想とする社会や働く場」づくりの夢を、常々語り合ってきた。
数々の苦労や周りからの厳しい声にも負けず、コロナ禍という逆風が吹く2年前に開園。看護師や働く母親の目線を大切にしながら、おむつや洗濯物を持ち帰らない手ぶら保育、3大アレルギーを除去して有機野菜などをふんだんに取り入れた給食─など、こだわりを詰め込んだ。
理想を追求する園の特色と、2人の今後の夢とは。

手ぶら保育実施 食材もこだわり

未満児対象の「ひかりテラス保育園」。看護師の資格を持つ有賀由紀子さん、竹内敦子さんの2人が、子育てに一番手がかかる時期の母子をサポートしたいと、さまざまな理想を詰め込んだ園だ。
温かみのある木材を使った園舎は、基本ワンフロアで目が行き届く。給食は食物アレルギーを起こしやすい3大アレルゲン(鶏卵、牛乳、小麦)を除去し、地域農家の有機米や野菜、生活クラブの食材を使う。せっけんは天然由来で自然に返るもの。「手ぶら保育」実施、おむつの定額利用サービスや着替えの洗濯も行うなど、随所にこだわった。

支え合い社会へ 夢への挑戦続く

園長の有賀さんは岐阜県出身。高校卒業後、定時制の准看護学校に進み、夜は病院で働きながら5年かけて資格を取得。「習ったことと現場でやっていることが全然違う」と、理想と現実の落差にがくぜんとし、また母親が育児をしながら働く厳しさを体感したことが、園発足の原点だ。
2人は5年前、塩尻市の訪問看護ステーションで知り合い意気投合。夢を語り合ううちに、世代の違う人々が支え合い過ごす「宅幼老所」をつくり、社会の在り方を少しずつ変えていけたら、と思うようになった。
松本市出身の竹内さんも、後に市の保健師として親たちの悩みに接する中で「もっと楽に子育てできていい。相談を一手に引き受けられる施設があれば」と痛感。まずは相談機能も持たせた保育園づくりに動き出した。
当時、塩尻市では未満児の待機児童もおり、想定外の新型コロナ拡大を除けば、開園には絶好のタイミングだった。休みの日にあちこち土地を見て回ったり、創業セミナーに交代で通い事業計画を練ったりした。30代女性2人の挑戦に「できるわけがない」と厳しい目も向けられたが、運良く条件の良い土地や協力者が見つかり、一気に夢が現実となった。
とはいえコロナ禍の渦中での開園。さらに看護師出身の2人と保育士とでは考え方に違いもあり、「全てが大変だった」と振り返る。
現在、定員は満員で、経営も徐々に軌道に乗ってきた。スマホのアプリを連絡帳に使って写真をやりとりしたり、母子のちょっとした変化に直接声をかけて話を聞く場をつくったり、子どもが体調不良の際は自宅での対応のアドバイスをしたり─と、きめ細やかなサポートが好評という。
2人がアイデアを書きためてきたノートには、1枚の絵が。中心に「みーんなが集える場所」の文字、周りに保育園のほか、子育て支援センターやカフェ、農園の絵もある。「やっと基盤ができて、これからが本番」。2人の挑戦は始まったばかりだ。