ボランティアが手入れ 信濃常盤駅前 庭園鮮やかに

利用客が楽しんでくれたら

「すごいきれい!いっぱい咲いていて、朝からテンション上がっちゃいます」
JR信濃常盤駅(大町市常盤)の駅前に整備された庭園が、今年もバラの季節を迎えた。通学で駅を利用する仁科台中学校2年の女子生徒。庭園の一角に咲き乱れる多数の花と芳香に見送られ、列車に乗り込む足取りも軽やかだ。多彩な植栽が楽しめる無人駅の駅前はこの時季、ひときわ彩り豊かになる。
庭園は1966年ごろから駅近くの住民2人がボランティアで造成、整備を始め、今ではそのうちの山田新一郎さん(79)が1人で手入れを続ける。半世紀以上、毎日のように手をかけてきた。だが、年齢的な心配もあり、学び楽しみながら継続的に作業するボランティア仲間を探している。

我流でこつこつ 育てる楽しさも

大町市常盤にあるJR信濃常盤駅の駅舎東に整備された庭園(計約1000平方メートル)の一角には、フェンスや棚などに誘引したつるバラ十数本が植わる。
列車内からも見える場所には赤い大輪のアンクルウォルター、スロープ脇には白色のアイスバーグとサマースノーを混植した。濃いピンクのアンジェラもかわいらしい。駐車場との境付近に咲く黄色のエバーゴールドは、上品な趣。鉢植えのバラも幾つか置いている。
花の時季には、バラ好きやカメラを手にした写真好きも訪れる。自宅でバラを育てる市内の60代女性は癒やしの芳香に包まれ、「これだけ咲かせるまでの苦労が分かる。無人駅に彩りが加わり、とてもすてき」と話し、感動した様子だった。
JR東日本の所有地に承諾を得てボランティアで庭園を造成、手入れを続ける山田新一郎さん。同駅を管理する信濃大町駅と相談し、「草畑にせず、利用客が楽しんでくれたら」と、一角にバラを植え始めたのは7、8年前から。剪定(せんてい)や誘引、消毒、花がら摘みなどをして育てている。知人らから分けてもらい、挿し木や接ぎ木で増やしたものばかり。「だから、名前を知らない品種もある」と笑う。
「素人だから、全部我流」という山田さん。「手抜きをしても、手をかけ過ぎても駄目。自分で経験しないと分からないね」。それでも、「いい花に育てるまでの過程が楽しいんだよ」と優しくほほ笑んだ。

末長い継続願い手入れ仲間募集

23、24歳のころから近所の年上男性と一緒に、当時は「野っ原だった」という駅前に庭園を造り始めた。かつては餓鬼岳への登山者も多く乗り降りし、「(駅前が)汚くちゃ嫌じゃん」。20年ほど前に男性が他界した後は1人で続けてきた。
マツやヤナギ、ツツジ、モミジ、サクラなど約200本の植栽は自分の山から移植したり、挿し木で増やしたり。剪定や刈り込み、草取りも1人でこなす。ぬかるんでいた箇所に廃材のブロックを敷いて園路も整備した。
国鉄時代から続く自主的な環境美化活動に対し、昨年度までに通算3回、信濃大町駅とJR東日本長野支社から感謝状が贈られた。塩原佳春駅長(60)は「長年これだけきれいに手を入れてもらい本当にありがたい」と感謝する。山田さんは「要は暇だってこと。ぼけ防止も兼ね、好きでやらせてもらっている」と控えめだ。
山田さんは最近、高所での剪定作業などにしんどさを感じ、引退も考えるという。「興味のある人はここで管理を経験して覚え、自宅の庭の手入れに生かしてもらっていい。ここではどんなに間違ってもいい。自分はプロではないが、知ってることは伝えるつもり」。都合の良い時間に一緒に手入れを楽しむ人の出現と、庭園の末永い継続を願っている。