松本の東さん 祖母・母の洋裁店をリノベーション 「思い」引き継ぎパン店に

ベーカリー マルトウ 松本市

両親や先祖の思いを引き継いだパン店に─。松本市大手3の東さよりさん(41)は、祖母と母が営んでいた洋裁店をリノベーションして「ベーカリーマルトウ」を3月、開店させた。店名の「マルトウ」は、曽祖父が営んだ「丸東金物店」を引き継ぎ、厨房(ちゅうぼう)は父が看板屋として使った倉庫を改築した。
東さんは子どもが小学校に入学する31歳の時、社会復帰を考えて職業訓練で製パンを学んだ。その時出合ったパンは、外側が硬くパリッとしたハード系。味に魅了された。
その後パン店で働き、2020年11月、上の子が高校生になる前に「独立するのは今」と開業準備。「お客さんは同世代が中心かな」と思っていたが、高齢の人から近くで働く人まで、さまざまな人たちが訪れる。1人で切り盛りする店を訪ねた。

ハード系パン幅広い常連客   懐かしい雰囲気大切に

松本市役所近くにある「ベーカリーマルトウ」の店舗はショーウインドーがあり、東さよりさんの祖母と母が50年ほど営んでいたという洋裁店の面影が残る、懐かしい雰囲気のたたずまいだ。
店内に入ると、天然酵母を使って焼き上げたハード系のパンやフランスパン、総菜パンが並ぶ。最初は、硬いパンをメインにするのは不安もあった。開店してみると「歯が悪くてね」と笑いながら「かむほど味が出ておいしい」と常連になった高齢の人もいる。「うれしい誤算」だった。
松本城に近いため「観光客が喜ぶ信州らしさ」を考え、信州みそを使ったパンも置く。みその香りが飛んでしまったり、塩気が多くなり過ぎたり、発酵しなかったりと難しかったが、試作を繰り返して完成させた。近くで働く人たちが昼食に買いに来ることも増え、要望に応えて総菜パンの種類を増やした。
毎日午前3時半には仕事を始める。パンによって全粒粉とライ麦粉などの配合を変え、発酵に時間のかかる天然酵母のご機嫌をうかがいなら、丁寧に焼く。酵母は「気温などで発酵具合が毎日違うので、最初は夜中に何度も目が覚めた」。以前同業者に「1人でやるのは大変だよ」と声をかけられた意味が分かったという。

曽祖父の印から店名受け継いで

東さんが独立に向け動き出した時、母親が「ここ(元洋裁店)なら私も手伝えるから、ここでやったら?」と提案してくれた。母親自身、自宅兼店舗だったことで祖母の手助けを受けられ、子育てと仕事が両立できたという思いがあった。
店の横には、父親が仕事で倉庫にしていた建物があり、厨房が作れる。先代が商売をしていた場所で、パン店をやると決めた。店名は曽祖父の印「○」の中に「十」が、カンパーニュ(フランスパンの一種)の外見に似ていることから「マルトウ」の名前を継いだ。
店内は、父親がパーティションを作るなど内装に手を入れた。洋裁店で使っていた裁断机をレジ台にするなど、古い物を活用している。
東さんは「お客さんの喜ぶ顔や、おいしいと言ってもらえるのが励み」と話す。
看板商品のカンパーニュは600円。コメ由来の酵母で作るライ麦パン(600円)は酸味がない。みその風味が香ばしい「信州MISO」(400円)や食パンもある。「抹茶あんバタ」「カレーパン」など総菜パンは季節によってメニューを変えている。
午前10時~午後6時(なくなり次第終了)。月、火曜定休。問い合わせはインスタグラムから。