「乗鞍すもも荘」オープンへ 旧ペンションを集いの場に再生

自然の中「余白」ある暮らしを

乗鞍岳の麓、四季折々の美しい自然の姿を見せてくれる松本市安曇の乗鞍高原。旅館やペンション、飲食店などが点在するエリアの一角に7月、コリビングハウス&スペース「乗鞍すもも荘」がオープンする。
オーナーは、かつて同じ場所で開業していたペンション「四季のうた」の次女、大須田淑恵さん(37、東京都)。10年ほど空き家だった建物を2年かけて改装し、短期移住者やアーティストらの暮らしや創作の場、地域の交流の場として再生させようとしている。
「大好きな場所が、自分の子どもたちや大切な人が安心して戻って来られるような第二の故郷になれば─」
目指すのは、みんなでつくり出す豊かな暮らしだ。準備が進む乗鞍すもも荘を訪ねた。

乗鞍高原は大切な場所

乗鞍岳へ向かう県道乗鞍岳線から少し入った森の中、れんが造り風の大きな洋館がコリビングハウス&スペース「乗鞍すもも荘」だ。広い庭は森につながり、近くには川遊びのできる清流がある。
オーナーの大須田淑恵さんは、ここで子ども時代を過ごした。高校進学を機に親元を離れ、現在は夫(40)、小学生の子ども2人と東京で暮らす。大須田さんにとって乗鞍高原は「ずっとつながっていたい、守っていきたい」大切な場所だ。
実家のペンションは2006年に廃業。翌年父親が他界、母親は県外で暮らしている。空き家となった建物を集いの場に再生できないか─。18年、大須田さんに共感する仲間と「乗鞍プロジェクト」チームを発足。東京と乗鞍を往復するうちに、現地でサポートしてくれる仲間もできた。コロナ禍で乗鞍へ通えない日もできることで協力し合い、少しずつ環境を整えた。
「コリビング」とは複数人で居住や仕事の空間を共有する暮らし方のこと。「スペース」には地域の人とも交流しながら新しいこと、わくわくすることを発信する場に─という思いを込めた。プロジェクトの仲間の子どもから「乗鞍といえばスモモだよね」と声が上がり、名称が決まった。

滞在の目的は人それぞれ

5月21日に見学会を開いた。松本市内や東京などから17人が参加した。母親の甲田恵美子さん(69)、姉の智恵さん(43)も埼玉県から駆けつけた。
正式オープンに向けて改装工事は真っ最中。居住者用とイベントでも使える大きなキッチンの二つを設置する共有スペースのほか、子どもたちのための「秘密基地」も特別にお披露目した。玄関脇のコーナーは、雑貨や古本などを売ったりギャラリーにしたり多目的に活用する。
一足早く今春から1年の予定で滞在している親子は「時間の流れ方がいい」と口をそろえる。母親は「東京では、いつも時間がない感じがしていた。ここは、いろいろが『ない』からこそ、生活の仕方の一つ一つを考えるようになった」といい、空いた時間に絵を描き始めている。
将来乗鞍に移住したい、自然の中で子育てをしたい、創作活動をしたい─など、滞在の目的は人それぞれ。「完成されたおもてなしはないけれど、余白のある暮らしだからこそ気づく事、できる事もあるはず」と大須田さんは考える。
「地域との関わりや学校など、新しい環境にいきなり飛び込むには勇気がいる。この場所が乗鞍というコミュニティーへの入り口になればうれしい」。既にみそ造りや壁塗りのワークショップを開くなど、集いの場として動き始めている。
滞在は1カ月、3カ月、1年間の短期移住として受け入れる。
見学会は7、8月も開催予定。問い合わせはメール(sumomonorikura@gmail.com)で。