元小中学校教諭関義弘さん 油彩画と書の初個展

元小中学校教諭の関義弘さん(86、松本市波田)は、退職後本格的に始めた油彩画と書の初個展を29日まで、波田文化センター2階ギャラリーで開いている。米寿を目前に「会話や対話を描く」をテーマに作品作りに励む関さんを会場に訪ねた。

会話や対話をテーマに描く

絵画は、これまでに描いた作品の中から、風景や花、果物などを題材にしたSM~30号の約40点を展示した。
爺ケ岳や鹿島槍ケ岳が水鏡に映る大町市の水田で、田植えの準備をする人々や、波田のスイカ畑で収穫をする人たちなど、身近な場所で農作業をする姿を多く描いた。画面の人物が、忙しく働きながら交わす何げない会話が聞こえてくるようだ。
「来(こ)し方(かた)を想(おも)う」と名付けた作品は、安曇野市の長峰山頂上のベンチに座り、眼下に見える景色を眺めながら、仲むつまじく語り合う関さん自身と妻の後ろ姿を描いた。庭で育てたアジサイやバラ、栗やリンゴなど静物の小作品も飾った。
教員時代に習い始めたという書は、中国の古典の碑文から引用した言葉などを書いた9点を展示。切れのある字や、筆の勢いを感じる作品が並んでいる。

リタイア後に本格的に制作

子どもの頃から絵を描くことが好きだったという関さん。小学生だった戦時中、「兵隊さんに送る絵」を描くことになり、B29爆撃機を日本軍が撃墜する絵を描いて先生に褒められ、その絵は実際に軍へ送られたという記憶も。
本格的に取り組んだのは教員を退職後、県総合教育センター(塩尻市片丘)勤務などを経て、波田町(当時)教育長を退いた後。絵画教室に数年通い、技法を学んだ。10年ほど前に地元の「波田絵画クラブ」に入会し、現在も月2回、波田公民館で活動している。
関さんは「風景を描くだけではなく、そこに溶け込むように人物がいて動きがあれば、見る人の想像をかき立てるのでは」と、言葉が聞こえるような場面を好んで描いてきた。
初個展で絵画や書を並べた感想を「これまでを振り返るいい機会を与えてもらった。納得できる作品が1、2点はある」と感慨深げだ。
「先輩の画集から発想を得て、描いてみたいものがある」と今後を見据えながら、「現場に行ってその空気を感じ、信州の自然と人々の営みを描いていきたい」。創作意欲はますます旺盛だ。

【メモ】
波田文化センターギャラリーでは、「波田noアート展」と題し、波田絵画クラブメンバーの他、波田在住者が来年4月まで、リレー形式で月ごとに個展を開いている。月曜と、祝日の翌日、毎月第4金曜は休館。入場無料。