自分のペースで「軽快」に
山道を走るトレイルランニング(トレラン)。コロナ禍以降、たまに“なんちゃってトレラン”を楽しんでいるが、きちんと基本を知りたいと思っていた。そこで山を走るエキスパートに頼み、6月初め、松本市、下諏訪町、長和町境にある三峰(みつみね)山(1887メートル)を走った(ほとんど歩いた)。
景色を楽しみながらより遠くへ
案内してくれたのは、県スカイランニング協会代表の木村卓哉さん(43、大町市)。意外にも高校までは帰宅部。1キロ歩くだけで息が上がったが、20代半ばで山登りに目覚め、その後、山で走ることにはまったという。5~30キロをメインに、100キロ近く走る大会にも出場。現在は大会運営などの裏方が中心という。
「競技を除きトレランの定義はあまりない」と木村さん。走っていても疲れたら歩くし、山道を速く登ることもあるといい、「山を速く移動することで、より遠くに行けていろいろな景色が見られるのが魅力。トレランは山で遊ぶための手段です」。全行程で、会話ができる程度の心拍数を維持することがポイントという。
今回、初心者向けに提案してくれたのは、ビーナスライン沿いの松本市と長和町の境にある扉峠から山頂を経て、和田峠(同町)へ下る約6キロのコース。
記者の体力に合わせて、登り道をゆっくり小幅で歩き続けた。木村さんは長距離になるほど、登りは走らず早歩きするという。途中、登山者と擦れ違う。「狭い登山道は、状況に応じて道を譲り合うのがマナーです」
山頂に近づくにつれ、木がなくなり視界が開けた。約40分ほどで到着。富士山も見え、山の名前をろくに知らない記者も360度ビューにため息が漏れた。
下りはランに挑戦。足でブレーキをかけずに“落ちる”イメージで下ると、速く走れるというが、石が多く滑りそうで怖い。「危なければ、蛇行してスピードを落とすか歩く。けがをしないのが大事」。上級者はわざと滑らせるという。
当たり前だが、木村さんが本気で走ると到底付いていけなかった。「平らな道を走るのは飽きる。景色が移り変わる山が好き」
扉峠から約1時間半で和田峠にゴール。朝ここに止めた記者の車に乗り、扉峠に駐車した木村さんの車を取りに行って終了|の予定だったが、木村さんの車内に鍵を忘れたことに気付き…。逆ルートで再びトレランを楽しむことができた(笑い泣き)。
【装備】▽持ち物=食料、水分、雨具、防寒シート、ライト、ファーストエイドキットなど登山と同じ。体にフィットする小さめのリュックに入れる。距離や天候で内容は変わる▽靴=自分の足に合った、丈夫で滑りにくいトレラン用シューズ▽スマートフォンで登山地図アプリを使う場合はモバイルバッテリーも―。山岳保険に加入しておくのがお勧め。
【注意点】▽初心者は山を知っている人かトレランに慣れた人と一緒に行く▽自分の体力を知る。体調や天候次第でやめたり、途中で引き返す判断が大事▽分かれ道がある度に地図で現在地を確認する▽事前に登山地図やウェブサイト「ヤマケイオンライン」の「ヤマタイム」などを活用し、自分の所要時間を把握しておく。
詳細はインターネットで「日本スカイランニング協会快速登山の注意点」と検索。
【トレランとスカイランニングの競技上の違い】トレランは長い水平距離を走る陸上競技の一種。スカイランニングは垂直距離や標高差が重要で、急峻(きゅうしゅん)な高山だけでなく超高層ビルでも競技が行われる。