グラススキー女子世界チャンピオン 前田さん「アスリート社員」に

五輪目指し「結果で応えたい」

グラススキー女子世界チャンピオンで、アルペンスキーでも2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を目指す前田知沙樹さん(23、塩尻市峰原)の所属先が土木・建設業の村瀬組(松本市里山辺)に決まった。
前田さんは松本大(同市新村)卒業後の昨季、アルバイトをしながら競技の活動費を捻出。こうした生活をいつまで続けられるか「不安だった」が、「アスリート社員」としてのサポートが約束され、「これ以上の環境はない」と喜ぶ。
一方、初めてアスリート雇用した同社の村瀬直美社長(71)は「目標に向かって挑戦する姿は周りの社員の刺激になる」と、若き有望株を歓迎する。
五輪出場という前田さんの大きな夢に、会社全体で乗っかり、実現に向け一丸となって走り出した。

言い訳できない今の環境に感謝

前田知沙樹さんの現在の1週間の生活はこうだ。午前6時過ぎに、トレーニングを兼ね、自転車で塩尻市の自宅を出発。村瀬組の社屋まで片道約20キロの道のりを約1時間かけて走る。
会社に到着。総務部に所属している前田さんは作業着に着替え、パソコンの置かれたデスクに着く。事務の手伝いや、電話応対、来客へのお茶出しなど会社の仕事は正午まで。退社後は、再び自転車で自宅に戻り、筋力トレーニングを約2時間、みっちりと行う。
これが火~木曜日の日課で、金曜日は、会社もトレーニングも基本的に休み。土、日曜日は滑走練習で、月曜日は会社に出勤、午後を体のリカバリーに充てる。
今月から、このスケジュールに、多くのアスリートも通う百瀬整形外科スポーツクリニック(松本市笹部)での週2回の専門的なトレーニングが加わった。
7月までこうした生活を続け、8月から斑尾高原などでの合宿、9月からはヨーロッパ遠征を行い、10月からシーズンイン。レースなどは翌年4月まで続くという。
競技に関わる費用は年間約300万円かかる。同社には正社員として就職した前田さん。月々の給料のほか、遠征費などについても検討してもらうことになっている。「昨シーズンまではアルバイトだったため、遠征などに出てしまうと収入はゼロだった。今の環境は最高で、逆に言い訳ができない」と感謝する。

チャレンジ精神会社の輝きにも

夏場、走行用ベルトが付いた板で芝の上を滑るグラススキーの2019、21年の世界選手権で2大会連続「4冠」に輝くなど、同競技の「世界女王」。一方、アルペンでも、松本大3年時の19~20年シーズンにワールドカップ(W杯)に4戦出場するなど、国内トップクラスで、今年の北京五輪も目指した。
大学卒業後の昨年、企業から時給契約などの申し出はあったというが、希望に合う所属先が見つからずに、アルバイトをしながら競技を続けた。
前田さんは「次の五輪まで、どうやってお金を続けさせるかという不安があった」と胸の内を明かす。
そこに手を差し伸べたのが、同大サッカー部のスポンサーをしていた村瀬組。同部の監督から前田さんを紹介された村瀬直美社長は、「五輪やW杯に出るのはものすごいチャレンジ。あらゆることへの『チャレンジ』を大きな目標にしているわが社も新たなチャレンジに向かいたかった」と、前田さんの採用を決断した。
前田さんは「安心して競技に打ち込める。五輪出場など、結果で応えたい」と決意を新たにする。
村瀬社長は「夢を与えてもらった。これを機に、社員一人一人が輝いてくれれば、会社も輝く」と期待する。