安曇野の木村さん 引き継がれる家屋を拠点にマルチな活動

再び多くの人が集う場所に

幕末から安曇野市穂高に立ち続ける大きな日本家屋がある。今は「喫茶常念」として多くの人を迎えている。主(あるじ)は木村徳子さん(30)。祖父母が営んでいた「そば処(どころ)常念」を使い営業を始めた。
築160年。大きな和庭がある空間を「以前のように多くの人が訪れる場所にしたい」と形を変えて営業を始めた。店内はゆっくりとした空気が流れる。祖父が集めた骨董(こっとう)と、敷地内の古道具屋を共に営む婚約者の藤原弘宜さん(33)が手入れをした古道具を置き、古い物を大切にしつつ今を表現している。
木村さんは、手仕事マルシェや音楽イベントも企画、感じたままを踊る「いのちの舞」を披露する活動もする。建物や人との縁を大切にしながら命を表現している木村さんを訪ねた。

祖父母のそば店形を変えて営業

長い歴史を感じさせる店内。手を入れた古い扉や、学校で使われていた木製の机が喫茶用のテーブルだ。祖父が集めた鉄瓶や大きな時計…。引き継がれてきた古い物が置かれているのに、現代的でおしゃれな空間になっている。「来た人がゆっくりできるように」と、日が暮れてもまぶしい照明はつけない。
木村徳子さんは大学卒業後、東京のホテルに就職し、憧れの職場で働く夢を実現させた。だが、あまりに忙しく時間が過ぎていく。「憧れと生きる喜びが同じとは限らない」と感じて退職。古里の松本市にUターン、アルバイトをしながら祖父母の営むそば店「そば処常念」を手伝い始めた。
2020年、祖父母が40年続けたそば店を閉めた。「この建物を開けたい。今までのように人が集う場所にしたい」との思いが募り、喫茶を開くことに。今年2月から少しずつ営業を始めた。
コロナ禍が続いたこともあり、県外から「やっと来られた」と、そば店閉店を知らない人が今も来る。「子どもの頃から毎年楽しみに通っていたと話す県外の方もいて、愛されていた場所なんだと改めて感じる」と木村さん。
店を拠点に、これまでに知り合った縁のある作家や歌い手、写真家など、さまざまな人とコラボをしたり、イベントも企画したりする。

「いのちの舞」など表現活動にも力

木村さんのもう一つのライフワークが、今感じることを表現する「いのちの舞」。大学時代、マレーシアで体を全く動かせない人の施設でボランティア活動をした時、施設の人に「この人たちは生きている価値があると思うか」と問われ、「何も言えない自分がいた」。その時から命について深く考えるようになり、内から湧き上がる思いを踊りで表現するようになった。
友人から背中を押してもらい人前で披露するようになると、「生きていることが美しい」と思ってくれる人、踊りに触発されて表現活動を始める人もいた。今生きていることを感じながら、心のままに踊り続ける。喫茶では舞を披露するイベントも催す。
喫茶はケーキ2種類(500円から)、コーヒーなどのほか、乳製品にアレルギーがある人も大丈夫なビスケットや豆乳のカフェオレなどもある。食事はこだわりのハムや平飼いの鶏の卵を使ったガレット(スープ付き1200円)。
営業日は毎月1~7日と、土~火曜日の正午~午後6時。イベントなどによる時間の変更や休みなどは =インスタグラム=で知らせている。