【ビジネスの明日】#38 東山食堂社長 濱岳志さん

「全てにおいて、変わらないことが一番。安定した味を提供したい」。こう語るのは、焼き肉店、東山食堂(塩尻市東山)の2代目、濱岳志さん(49)だ。創業50年を超える老舗は、今でも週末を中心に行列ができる人気店だ。今月末には茅野市に2号店を開く。
2号店は、茅野市の通称ビーナスラインに隣接した花蒔(はなまき)公園の横にオープン予定。「東山の焼き肉の味をより多くの人に知ってもらいたい」が一番の目的だ。
店舗はフランチャイズ契約。「直営も考えたが、人材育成や店舗運営の面で人手が足りなかった」という。

門外不出のたれの味大事に

岡谷市出身の父・操さん(84)が、1970年代始めに現在地に創業。当初はテーブルが3、4卓あっただけの店舗で、メニューはラーメンやカツ丼など「街の食堂」の定番。焼き肉はその中の一つだった。
ところが、操さんが仕事で訪れた九州の焼き肉店で味わった「みそだれ」を参考に考案した、独自のたれが口コミで徐々に評判に。創業から約10年後には焼き肉専門店になった。
人気に比例して、店舗も増築の繰り返しで大型化。現在では約240人を収容できる。それでも週末や大型連休などには入店待ちのお客で行列ができ、高速道路のインターチェンジが近いこともあり、県外客も多いという。
多くのお客のお目当ては、「他では味わえないたれの味」。20種類以上の食材を組み合わせるといい、どんな食材を使うかやその配合は、操さんと妻の良江さん(故人)、岳志さんの3人しか知らず、「文書化もしていない」という「門外不出」の味だ。
お客が増えるほど、作るたれの量も増え、2号店の開店も間近に控える。「肉の仕込みなどは誰かに任せて、たれ作りに専念したいが」と苦笑いする。

従業員が広い店内を「義経鍋」という2、3キロはある鉄板を、何枚も持って接客するのは重労働。「少しでも休ませてあげたい」と、30年近く前から「週休2日制」を取り入れているのもこの店の特徴。
2代目になってからは、通し営業だったのを昼と夜の部に分けたり、休日営業の後に連休が取れるようにしたりと、働き方に気を配る。
「お客さんはもちろん、従業員に支えられてここまで来られた。これからも記憶に残る味を提供し続けたい」

【プロフィル】
はま・たけし 1973年、岡谷市出身。高校卒業後、東山食堂入店。2002年、同店を運営する「東山食堂」の社長に就任。同市在住。