前回に引き続き、勝ち負けのある遊びについてです。負けると怒りだすというタイプの方は、ある意味分かりやすいのですが、負けても派手に怒ったりはしないけれど、ダメージを蓄積してしまうタイプのお子さんもいます。
通常は勝っても負けても、その場で楽しんでおしまいの遊びでも、「負けた」ということに「自分がうまくやれなかった」とネガティブなイメージを持ってしまい、その嫌なイメージを何日も引きずる子もいるのです。このタイプの方は、勝ち負けが明らかになる運動会や記録会などの行事では、受けるダメージが大きく疲弊しやすいことがあります。
また、このタイプの方は、遊びでさえ勝ち負けにこだわっているぐらいなので、学業やスポーツ・芸術などでも評価を気にし、「常に勝っていなければならない」という思い込みが強いことも往々にしてあります。
こうした気質は、育て方など環境の影響を受けることも多少はあるかもしれませんが、特に年齢が低い頃から続いている場合は、持って生まれた気質によるところが大きいようです。
こうしたタイプの方は、学校などでは常に完璧主義で、「何事も上位でいなければならない」というこだわりが強くなりがちです。それが能力相応で達成できているうちは、それほど大きな問題にならないようですが、個人のキャパシティーを超えてくるころから、さまざまな不調やこだわりが表面化し、苦しくなることもあります。
勝ち負けにこだわるタイプの場合、勝ち負けをあおり過ぎず、うまくいっていることでも、大人がそれを助長するような声かけやサポートをし過ぎず、勝ち負けのない活動での楽しみも経験したいですね。「負けても何も困らない。大丈夫」だということを、低年齢のうちからあえて実感できる経験をさせていくことが、大切だと思っています。
【なないろキッズ】 #74 負けても大丈夫な経験を
- 2022/07/19
- 小児科医・新美妙美のなないろキッズ