夢ある珍しい野菜で笑顔に

信州ゆめクジラ農園 安曇野市

タルディーボ、ライムサワーキュウリ、ホットチェリーって、どんな野菜?安曇野市堀金三田にある「信州ゆめクジラ農園」の生産者グループは、少量多種をモットーに、年間150種の珍しい野菜を栽培し、県内や東京などのホテルのレストランや飲食店に販売する、ユニークな取り組みを続ける。
代表は生産者の三吉雅子さん(49)。体調不良もあり、東京から安曇野に移住。野菜料理が好きで、料理を提供する仕事に従事したが、「もっと夢があり、人を楽しませる仕事を」と、一念発起して就農した。
サポート役は野菜ソムリエの古田俊(すぐる)さん(46)だ。シェフと栽培野菜を相談したり、生産者に栽培を依頼したり、配送したりして切り回す。2人は「野菜で笑顔になって」と、珍しい野菜と向き合う。

少量多種をモットーに13人と150種栽培

赤いふ入りのチコリ(タルディーボ)、酸味のある2センチほどのキュウリ(ライムサワーキュウリ)、赤や黄、オレンジ、白などがありとても辛い唐辛子の仲間(ホットチェリー)─が答えだ。どれも信州ゆめクジラ農園で作っている。
代表の三吉雅子さんは、38歳で安曇野市へ。新鮮でおいしい野菜が手に入りやすかったからだ。同市で料理を提供する仕事をするうち、収穫の季節や育て方など、野菜の背景を伝えると、食べる人に笑顔になってもらえることに気づいた。野菜を作ったら、もっと喜んでもらえるのではないかと就農。見たことのない野菜だったら夢がある、という気持ちが、信州ゆめクジラ農園の原点という。
広報や栽培計画、生産者の確保、配達などを手がける野菜ソムリエ・古田俊さんは、以前から感じていたことがある。「農業は物作りなのに、生産者が自分で値段を決められない。おかしい」
まとまった量でないと買えないし、特別な野菜は高い。輸入品は鮮度が良くない─など、知り合いのシェフから聞いた話も、農業関係の仕事をしたいという気持ちを後押しした。
「個人経営の飲食店は、新鮮で少量で届く特別な野菜を使いたがるのでは」。2人の方向性が一致して2017年、信州ゆめクジラ農園がスタート。現在は三吉さんの他、60~80代の13人が約150種の野菜を栽培している。

多彩なアイデア 農業盛り上げて

三吉さんは農業初心者。代理店を通し、外国原産の野菜の種を仕入れてまくが、栽培の仕方が分からない。小さい作物も多いので、手がかかる。試行錯誤の連続だったが、「この野菜何?」「イメージしていたのと味が違う」「おいしい」と、喜ぶ人の顔を思い浮かべ、頑張ってきた。
手応えを感じ始めた頃、コロナ感染が拡大し、飲食店からの注文は激減した。個人向けのネット販売は、「おうちご飯」が主流になった当初はよく売れたが、珍しい野菜は使い方が分からないと、徐々に売り上げが減少した。
どうすれば売れるのか─。そこから生まれたのが「虹色サラダMix」だ。スティックタイプのニンジン、レタスなど、食感や味が異なり、彩りを考えた10種以上の野菜が入る。家で手軽にレストランの味が楽しめると好評で、県内のスーパー、東京などでも販売する。
料理人が必要とする野菜を必要な時に、必要なだけ届けたい。化学合成肥料に頼らず、健康的な野菜を作る土作りも大事な仕事だ。今後は、規格外の野菜を買い取り、ペーストにして付加価値を付けたり、温泉を利用してマンゴーを栽培したりと、より農業を盛り上げたいと考えている。
「この地で雇用を生み出したい」と三吉さん。古田さんは「1次産業を軸として、地域産業を豊かにする」。2人は、これからの農業を模索し続ける。栽培している野菜の種類などはホームページに。