白馬の食材・魅力ドーナツで発信

OTTO donuts hakuba(オット ドーナツ ハクバ) 白馬村

白馬村北城に5月に開店したオールドファッションドーナツの専門店「OTTO donuts hakuba (オット ドーナツ ハクバ) 」。民家を改装した店で、季節の食材や意外な食材を用いた品が豊富で目移りする。
村内産ケールと、ナッツを使った未知の味を尋ねると、「苦味はありますが、ナッツの香ばしい柔らかい味が入るので…」。楢橋広和さん(50)、和希さん(50)夫婦がはきはきと、あうんの呼吸で接客。ともに料理人だからこそ思いつく食材の組み合わせだ。
2016年の熊本地震で、広和さんの故郷・熊本市で営んだイタリア料理店が被災し閉店。6年後に白馬村でドーナツ店を開く未来を誰が予想できただろうか。「白馬の豊かな食材や魅力をドーナツで発信したい」と張り切る。

旬の果物や野菜 楽しく新しい味

白馬村の中心部に開店した「OTTO donuts hakuba」。なつみ農園(上田市)のシラネコムギを店内で石臼びきした全粒粉と県産の小麦粉を使い、できるだけ地元食材を使ったオールドファッションスタイルのドーナツを製造、販売する。
定番の「プレーン」は全粒粉の配合割合を多くし、食べ進めるほどに小麦本来の甘さが感じられる。「不動の人気です」と製造を担当する楢橋広和さん。
販売する商品は基本的に9種類。1個230~260円。プレーン以外は季節で替わる。旬の果物や野菜などを用い、短かければ1週間ほどしか並ばないものも。八幡屋礒五郎(長野市)の七味唐辛子を使った“変わり種”は、意外にもリピーターが多かった。セリとハッカ、村内産紫米の甘酒などの素材を使った品も登場し(現在は終了)、来店のたびに新しい味に出合える楽しさがある。
地元農家らが食材を持ち込んでくれることも増えた。ドーナツにして味を生かすのが難しい食材もあるが、料理人の技や経験を発揮して工夫を凝らす。開店から2カ月。幅広い年齢層や近隣市町村からの来店もあり、手土産に購入する人も。冷凍で全国発送にも応じている。

熊本で伊料理店 被災して信州へ

東京の店で修業していた際に知り合い、結婚した広和さんと和希さん。偶然、同じ年にそれぞれイタリアへ料理留学していた。2011年、念願の自分たちの店を熊本市で開店。生産者や食材探しにもこだわり、食材の育つ環境を自分で見て来店客に説明した。
16年、熊本地震に見舞われた。店と住居の入った建物は大きな被害を受け、泣く泣く閉店。かつて修業した店のオーナーの計らいで、住み込みで軽井沢のホテルで働くことに。3年が過ぎ、「訪れたことはないが、何となく気になっていた」(和希さん)白馬村に2人で移り、宿泊業に就いた。
白馬で暮らし地元のことを知り、再び自分たちの店を持ちたい気持ちがわき上がった。コロナ下なのでテイクアウト店を選択。熊本で週末のマルシェに出したドーナツが好評だったため、ドーナツ店に決めた。
「提供する品が変わっても、作り手の顔の見える素材を選び、伝えていく私たちのスタイルは変わらない。ドーナツにも料理と同じ感覚を込めています」と和希さん。
「気温差が大きいから食材が甘く味が濃い」と、広和さんも白馬の地をすっかり気に入った。「何か導かれるんでしょうね。私たちは運がいいのかな、皆さんに助けられて」。震災を経験したからこそ、縁の大切さを実感する。
「OTTO」はイタリア語で数字の8の意味。末広がりの縁起の良さなどを受けて、前店から受け継ぐ屋号だ。今度は白馬からドーナツが結ぶ縁が広がっていく。
午前8時~午後4時。月曜、第1、3火曜定休。ウェブサイト。TEL090・1794・1481