【小林千寿・碁縁旅人】#32 南仏ニースの夏

由緒ある建物の中庭で開催された野外コンサート

2011年8月、フランス・ニースで毎年開講されている音楽マスターコースを、パリ在住時にご縁ができたピアニストのイブ・アンリ先生(パリ国立音楽院教授)の伝(つて)で見学しました。
このコースは欧州の音楽大学の学生が主ですが、日本からも音大の学生、既に音楽の先生をしている方、趣味でピアノを続けている方など多様な生徒さんが参加。日頃は囲碁を教える立場ですが、他の分野のマスターが教える様子を見学するのは、とても参考になりました。
ピアノの技術は分からなくても先生が生徒に何を要望しているのか、伝わるものがあり、興味深かったです。
また夏休みの南仏ニースはバカンスの人々で賑(にぎ)わい、夕暮れ時の海岸沿いの散歩、映画にも出てくるネグレスコ・ホテルの美術館のようなロビーの見学。有名ブランドのウインドーショッピングで目の保養。夜はテラス・レストランで海を見ながらお食事。どこのレストランもおいしく、日本好きの人も多く好意的で、明るい南の人たちとの会話も楽しかったです。
また夜は野外コンサートへ。南仏でも夜は快適な気温で心地よい長い夜です。オペラ、クラッシック音楽も大好きな私には素晴らしい数日でした。
ただ残念だったのは、ニースから海岸沿いに12キロ(その先8キロにモナコ公国)、コート・ダジュールのエズ村に行けなかったこと。海岸から数百メートル、標高427メートルの岩山にあり、歴史が紀元前2000年からある小さな村で、要塞(ようさい)の役目もありました。そこから見る紺碧(こんぺき)の海、石畳の家並みを見たかったのです。
地中海の海の色、空の色は日本にない青さ。そして遠い対岸はアラブ諸国です。
紺碧の海を跨(また)いで異国が、どんな歴史を築いてきたのか興味深い地域です。
(日本棋院・棋士六段、松本市出身)