犀川夏の風物詩「赤魚漁」

高齢化・後継者不足の中…明科の石田さん

【犀川伝統の赤魚漁】
コイ目コイ科に分類されるウグイは、産卵期の5~7月に婚姻色の鮮やかな朱色に染まる。安曇野市や松本市などの犀川水系では、親しみを込め、婚姻色のウグイを「赤魚」と呼ぶ。川底の汚れのないきれいな玉砂利に産卵する習性を生かし、人工の産卵床を作り、集まるウグイを投網などで捕獲するのが赤魚漁だ。
同様の漁法も千曲川水系になると呼び方が違う。佐久地域から下流の上田や長野地域では「つけば漁」と呼ぶ。

【自然に近い独自の赤魚漁】
石田さんの赤魚漁は、くいや板など人工的な資材を全く使わない自然の状態に最も近い漁法だ。そのヒントは30年前。速い流れが岸にぶつかって渦を巻き、自然にできた産卵床にウグイが群がる光景を偶然目にし、「衝撃的だった」。以来、重機を使ってその状況を再現し続ける。
4月27日午前10時。石田さんに同行し、同地区塔ノ原、犀川右岸の漁場に立ち、下流から上流を見る。眼前には直径約5メートル、水深1メートルの「回りず」と呼ぶ円形の深みができている。上流約20メートル地点で本流から枝分かれした「す水」と呼ぶきれいな玉砂利を流す幅1・5メートルの水路の水が「回りず」に流れ込み、右回りで回っている。
5月17日午後8時45分。暗闇の「回りず」の縁に立つ石田さんの手元から重さ4・5キロの投網が舞った。ライトで照らすと、引き上げた網の中で婚姻色に染まったウグイが元気に跳ねる。豊漁だ。石田さんは、ウグイのにおいで下流の群れをおびき寄せるため、捕った魚のほとんどを種魚として「種箱」に入れ、「す水」に伏せた。
投網を打つのはなぜ昼でなく夜なのか?石田さんに聞くと、「増えたカワウやサギ類を警戒しているのか、昼間はあまり群れなくなった」。

【犀川の自然への恩返し】
昔は1日に200キロ捕れたこともあったというが、今は自家用と、地バチ(クロスズメバチ)を捕る際の餌に使う愛好者に頼まれている分だけ。必要以上は捕らない。
半世紀以上にわたり犀川と向き合う石田さんが、自然の産卵床に似た漁場づくりにこだわる理由がもう一つ。「(自然に近い状態にしてやることで)赤魚が増え、安住の場にもなれば」との願いからだ。川底の石に産み付けられた黄金色の小さな卵を見ながら、石田さんは「ささやかだが、大自然への恩返しになればうれしい」と話した。
(丸山祥司)