【2022信大講座新聞をつくろう】信州郷土の味 馬肉 どんな味? 親しまれる由来は?

馬肉バル新三よし 老舗で馬を食べ尽くす

創業1899(明治32)年の「馬肉(さくら)バル新三よし」(松本市中央1)。元は松本の繁華街「裏町」にあった料亭で、2000(平成12)年に料亭の看板料理だった馬肉をメインにした居酒屋に業態を変えた。
歴史を感じさせる店内は、馬に関する絵画や人形、置物などがそこかしこにあり、まるで馬の博物館のよう。5世紀以降、信州は国内有数の馬産地だった。高山浩邦店長(40)は「馬は、信州を繁栄させた起源ともいえるもの。切っても切れない関係にある」。
馬肉料理を「写真映え」させようと、馬の置物や絵皿と一緒に料理の写真を撮るお客も多いという。
「馬刺し」は、肉の部位ごとにお勧めの食べ方がある。基本はしょうゆでいただくが、脂が多い「たてがみ」という部位はしょうゆをはじくため、ショウガとみそを付けるのがお勧めだ。
他にも専門店ならではのメニューが。馬の大動脈をゆで、大根おろしとポン酢で食べる料理は、コリコリしているが歯切れがよく食べやすい。アキレス腱の唐揚げは、コラーゲンのような食感。信州みそであえたユッケなど、どれも初めて口にした。
馬肉について、高山店長は「牛肉の約3・5倍のグリコーゲンを含むなど栄養価が高く、健康にもいい」。板前の加藤幸夫さん(45)も「馬は基礎体温が高く、寄生虫が存在しにくいので、レバーなどの生食もできる」と特長を話す。

卸売業「クボタ」に聞く 国産減る馬肉の今昔

「当社は日本で初めて、カナダやアメリカから真空チルドで生の馬肉を輸入した」。飲食店や小売店に馬肉を供給している食肉卸売業「クボタ」(塩尻市広丘野村)の久保田實男社長(75)と久保田浩史専務(44)はそう話す。
現在、日本で食べられている馬肉の80~90%が外国産。大型馬は北米やヨーロッパ、小型馬は韓国や中国から連れてくる。国産は北海道産だけで、以前と比べると少なくなったという。
信州の郷土料理とされる馬肉だが、久保田社長によると元々、馬を食べる習慣はなかった。海から遠く、新鮮な魚が手に入らない信州で、身近にいる馬が主要なタンパク源になったのは、明治以降という。
食用とされたのは、能力が低い競走馬や高齢の馬、そして物資の輸送や農耕用に大量に飼われていた馬たち。馬肉の約80%は加熱調理され、特に南信や中信地域で好んで食べられてきた。
しかし、近年は馬肉が手軽に食べられなくなってしまった。「円安で仕入れ値が高騰し、ここ1~2年で価格が約3割上がった。若者の消費量も減ってしまった」(久保田社長)。九州より歴史が古いとされる信州の馬肉文化だが、そのほとんどを輸入に頼る今、難しい局面に立たされている。

取材を終えて

鵜澤鼓(教育学部)信州につながりの深い馬肉の背景を調べていく中で、自分が住む長野県についてさらに理解を深めることができた。馬が、信州が繁栄する基になったということを初めて知った。古里について、まだ自分が知らないことが多くあると感じた。
奥山希悠(工学部)慣れない取材や記事作成は難しく苦戦したが、無事に書き上げることができて良かった。馬肉の知られざる一面を知った時に、取材をした価値があったと実感した。この貴重な経験を、私の成長の糧にしていきたいと思う。
小浦正太郎(工学部)人生初の取材は思ったより緊張した。質問内容をいくつか考えて行ったにもかかわらず、話を聞きながらメモを取っていると、次の質問のことまで頭が回らず、思い通りに事が運ばなかった。難しかったが社会人の話が聞け、よい機会だった。